2019年6月30日日曜日

(K0791) 「老後に2000万円必要」問題(5) / 答申の主張から的外れ <高齢期の家庭経済>

 
 そもそもの発端は、

===== 引用はじめ
 金融庁は3日、長寿化が進む人生100年時代において、金融資産の不足を生じさせないための提言を盛り込んだ報告書を取りまとめた。「これまでより長く生きる以上、多くのお金が必要となる」と指摘し、生活水準を維持するには保有資産の運用など“自助”の取り組みが重要と指摘。「現役期」「退職前後期」「高齢期」の3世代に分けて対応策を例示した。
===== 引用おわり
 
 
 これを言うために、前提として、

===== 引用はじめ
 報告書では夫65歳以上、妻60歳以上の無職世帯では、毎月平均5万円の収支不足が生じているとし、今後30年の人生があるとすれば、単純計算で2千万円が必要と試算。公的年金が「老後の収入の柱であり続けることは間違いない」とした上で、支出の再点検や資産運用などの取り組みが必要とした。
===== 引用おわり
 
 モデルを設定して、試算した。これ自体には、何の問題もない。問題があるとすれば、「問題ないことを問題ありと騒ぎ立てた」人たちがいたことだ。
 

 もし本当なら、ずっとこの問題を問い続けなければならない。しかし、通常国会が終わったら、何も言わない。安倍政権を追い詰める材料にしようとしたが、所詮的外れ、かわされた。だから議論しない。党利党略に利用しようとしただけ。国民のことなどどうでもよい。

 本当に議論しなければならないのは、“「現役期」「退職前後期」「高齢期」の3世代に分けて対応策を例示した”ことの是非だろう。国民のために何の訳にも立っていない国会。責任は野党にあると思う。さらには、受け取らなかった金融担当相にもある。
 


 具体的な内容に興味のある方は、以下を見てください。
 
===== 引用はじめ (箇条書き形式にした)
 報告書は、
(1)  老後まで時間がある「現役期」は少しずつでも毎月一定額を複数の投資商品に長期間、分散して投資し続けることを提案。
(2)  「退職前後期」には退職金や年金受給額を把握することなどを勧め、資産の不足が予想される場合は働く期間を延ばすことや、住宅の売却、物価の安い地方への移住も選択肢とした。
(3)  また「高齢期」では大病や老人ホームへの入居などで、当初の想定よりも医療や介護の費用が膨らんでいる可能性があると指摘。将来的な認知機能や判断能力の低下に備え、金融資産を整理し、通帳の保管場所や資産情報を信頼できる第三者と共有するといった対策が重要とした。
===== 引用おわり
 


<出典>
3世代での資産形成を 金融庁が報告書 自助の重要性を強調
https://www.sankei.com/economy/news/190603/ecn1906030019-n1.html
産経新聞(2019/06/04)

2019年6月29日土曜日

(K0790)  優しくするってどういうこと? <臨死期><親しい人の死>

 
 「生きることは楽しいこと」なのか「生きることは苦しいこと」なのか、は一概には決められない。楽しいと思うか、苦しいと思うかは、本人次第であり、他者が良いとか悪いとかは言えない。

 コントロールすることはできないが、意図する・しないは別にして、影響はある。自分の行動や存在が誰かに苦しみを与えているなら悲しいことだし、楽しさに寄与しているなら嬉しいことだ。ただ、そればかり気にして生きようとすると、自分を生きれなくなり、自分が苦しくなるので、ほどほどにするしかない。
 
 
 とはいえ、家族だと特別の思いも出てくる。(K0788)で呼吸が戻らないままに逝かれた方の息子さんに聞いたそうです。
 
===== 引用はじめ
 息子さんに「あの頃を思い出して今思うことは何でしょうか」とお尋ねしたところ、「もっと優しくしておけばよかったなと思います」ということでした。

 「優しくするって具体的にどうされたかったのですか?」とお尋ねすると「自宅に帰らせてあければよかった」ということでした。忙しさの中で後回しになっていた「自宅に帰りたい」という願いをかなえてあげることができていればということでした。
===== 引用おわり
 
===== 引用はじめ
 ついつい親に強く当たってしまうあなたが親にやさしくするとすれば何をしますか? 私にとっても大きな宿題です。あの親に優しくする? うーん難題。でも残り時間がいくらでもあると思わずしっかり考えます。
===== 引用おわり
 

 後でカバーできることと、後ではカバーできないことがある。臨死期が近づくと、全てが「後ではカバーできない」ことになっていきます。「優しくするって具体的にどうすることなのか?」――自問を繰り返さないと、行動に移せません。
 

<出典>
尾崎容子、優しくするってどうすること?
【在宅善哉】 産経新聞(2019/05/28)
 
添付写真は、以下より転載。
http://okhomeclinic.com/message/index.html

2019年6月28日金曜日

(K0789) 「老後に2000万円必要」問題(4) / どこがおかしいのか <高齢期の家庭経済>

 
(K0787)からの続き
 
 「老後に2000万円必要」問題、どうもおかしい。どこがおかしいのか
 
(1)   野党の「言いがかり」と与党の「言い逃れ」という政治姿勢

(2)  「官僚の省益を大所から調整し国益を実現する」という政治家としての責任の放棄

(3)   年金制度・国家経済にまるで無知・無責任な野党
 

【展開】

(1)   野党の「言いがかり」と与党の「言い逃れ」という政治姿勢
 竹中平蔵(東洋大学教授): 野党の「言いがかり」と与党の「言い逃れ」という政治姿勢から議論が混乱した。国民の年金不安を煽(あお)るばかりだ。政治リーダーたちは、分かりやすく透明な年金制度としての「社会保障個人勘定」の充実など建設的な議論を展開すべきだ。
 
(2)  「官僚の省益を大所から調整し国益を実現する」という政治家としての責任の放棄
 堀洋(産経新聞 編集長): 年金制度は厚生労働省の所管だ。今回の報告書は財務省外局の金融庁の審議会がまとめた。所管していないからこそ、“気楽”に「年金だけでは老後資金に足りない」と言えたのだろう。逆に言えば、報告書は年金制度の限界を正直に認めたとも評価できる。
 「日本の役所の一番悪い点は【時々、国益よりも省益を優先する】こと」とよく言われる。私(=藤波)は、分業体制にしているのだから当然のことと思う。各省の言い分はある意味正しいが、他の省にとっては弊害が出ることもある。部分部分にある程度の弊害が出ても、全体として最も国益になるよう、落としどころを作るのが政治家の役割だと思う。その役割を放棄している。年金も大事だし、国家経済も大事だ。
 
(3)   年金制度・国家経済にまるで無知・無責任な野党
 竹中平蔵(東洋大学教授):混乱したのは、まず一部野党とメディアが「100年安心」な制度と称してきた政府を批判し、国民の不安を煽ったことだ。しかし100年安心の意味は、いわゆるマクロ経済スライドという仕組みを組み込んだことで現状の制度が持続可能になった、という意味で使われてきた(もちろんマクロ経済スライドの運用面で幾つかの問題があるが、それは今回の報告書とは別次元の問題だ)

 「100年安心」は、年金だけで暮らせることを意味しないのは自明の理であり、世論調査がそれを示している。国民の多くが知っている基本を、野党は全く理解していない。
 年金だけで暮らせるようにできなくはないが、税金を大幅に上げないと実現できないのも自明の理である。「増税反対。かつ、年金だけで暮らせるようにせよ」というのは無責任だ。

 「国民は、…」と言っているが、国民が何を考えているかすら、分かっていない(世論調査とは違うことを言っている)。「私たちは正しいことを言っているので、国民も同じ意見に違いない」と思い込んでいるのだろうか? 国民の一人として、根拠なく「国民は」とは言わないでほしい。

 「『自己責任で貯金せよ』とは国家的詐欺に等しいやり方だ」という意見は、訳が分からない。自己責任で貯金せよというのは当然だ。努力してもできなかった人の為には、生活保護制度がカバーしている。国家的詐欺ではないだろう。
 

<出典>
竹中平蔵、“年金不安”に安心の処方箋示せ
【正論】産経新聞(2019/06/20)
https://special.sankei.com/f/seiron/article/20190620/0001.html

 

2019年6月27日木曜日

(K0788)  生き続けることの苦しさ <臨死期>

 
 生き続けることが苦しくなることがあるが、これは「加齢により体が生きる限界に達した時」と、「そうでない時」の二つに分けなければならない。


 結論から言うと、「そうでない時」は何としても生きる努力を続けなればならないと思う。
 しかし「加齢により体が生きる限界に達した時」は、生き続ける努力を止めてもよいと思う。これには手順がある。先ず本人が「これ以上生き続けなくてもよい」と思うこと、次に家族等本人に深く関係している人がそれを容認すること。この二つのステップを踏んだ時、尊厳死を認めて良いと思う。認めるべきだと思う。
 

 本人が「これ以上生き続けなくてもよい」と思っているか否かは、本人が言葉で意思表示できなくても、伝わるものだと思う。コミュニケーションの手段は言葉だけではない。日頃からよく話し合っている家族なら、愛する家族が「これ以上生き続けなくてもよい」と思っているかどうかは、間近で様子を見れば、的確に判断できると思う。その判断は、予め書いておいた「リビングウイル」で判断するより、よいと思う。
 
 
 たとえリビングウイルに何が書いてあろうが、本人が「まだ生きたい」と思っているなら生かしてほしい。そして「これ以上生き続けなくてもよい」と思ったようなら、心臓マッサージや人工呼吸で無理やり生かし続けるのは止めてよい。静かに、自然の成り行きに任せてほしい。そのような状態で生き続けるのは、苦しいことなのだ。
 とはいえ、リビングウイルがあるのにそれを無視するのも問題だ。だから、私はリビングウイルを書かない。その場になってみないと、自分がどう思うかは分からない。予め書くことにより、その時の判断の自由度を奪いたくない。
 

===== 引用はじめ
 その弁護士さんは「○○さ~ん!がんばってよ!もう、息子さんこっちに向かってるからね!と大声で伝えたのだそうです。すると、ビクと体が動き「あ!呼吸が戻るのかな!」と弁護士さんは思ったのですが、呼吸が戻ることはなかったのだそうです。
 この話を聞いて、「やはり最後まで耳は聞こえるって本当だったのだな」と、いつも自分が人に説明していることながら、それが確認できたことに驚きました。最後まで、というより、心肺停止後ほんの数分かもしれませんが大脳はまだ生きていて、耳が音を認識しているのかもしれません。心肺停止後も大脳がまだ生きているとすれば、その時間に儀式的な胸骨圧迫(心マッサージ)や人工呼吸などの痛いことはやめてあげてほしいなあと思うのでした。
===== 引用おわり
 
(注)「リビングウイル」とは
https://www.songenshi-kyokai.com/living_will.html
 
<出典>
尾崎容子、優しくするってどうすること?
【在宅善哉】 産経新聞(2019/05/28)


添付イラストは、以下からの転載。
https://ameblo.jp/one-kaigo-tanoshi/entry-12390433405.html

2019年6月26日水曜日

(K0787) 「老後に2000万円必要」問題(3) / 世論・経済界は何を言っているか <高齢期の家庭経済>

 
(K0785)からの続き。
 

 世論は何を言っているのか。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)は15、16両日、合同世論調査を実施した。
 

 主な結果を添付図に示す。要約すると、

(1)  金融庁の試算を受け、年金制度の信頼度について「不信感が増した」との回答が51・0%に上り、「変わらない」の44・6%を上回った

(2)  麻生太郎金融担当相が報告書を受理しない対応については「適切でない」との回答が72・4%を占めた。自民党支持層に限っても68・7%が「適切でない」と回答した

(3)  「これまで老後は年金だけで暮らしていけると思っていたか」との質問では「思っていなかった」が84・2%に達し、「思っていた」の13・9%を大きく上回った
 

 同時に、内閣支持率と政党支持率も調査している

(1)  安倍晋三内閣の支持率は47・3%で、前回調査(5月11、12両日実施)より3・4ポイント減り、不支持率は同1・6ポイント増の36・5%だった。

(2)  自民党の支持率も前回比5・1ポイント減の35・9%となり、「2千万円問題」が影響したとみられる。一方、野党の政党支持率は伸び悩んでいる。立憲民主は前回比0・6ポイント減の6・8%、国民民主も同0・6ポイント減の0・5%にとどまった。国民が冷静に年金制度をとらえている中、批判だけで支持を得るのは難しいようだ。

(3)  「支持する政党はない」は、前回比5・2ポイント増の40・6%。増加ポイントが最も大きかったのは「支持する政党はない」だった
 
 自民党と立憲民主党・国民民主党が共倒れ。政治不信のみが高まったのではないか。
 


 では、経済界は何を言っているか。
 
 経済同友会の桜田謙悟代表幹事(SOMPOホールディングス社長)は18日の定例会見で、老後に夫婦で2000万円の蓄えが必要と試算した金融庁金融審議会の報告書問題について
 「資産運用が貯蓄から投資へ、先進国並みに進んでいないことに警鐘を鳴らしたものだと思う。だが、2000万円、3000万円との数字だけが独り歩きしている」と述べ、本質的な議論から外れていると批判した。
 また、「年金だけではなく、介護や医療などの社会保障費は、(負担する世代が減る中で)今のままでは持たないという議論になるはずで、何をすべきかの国民的な議論につなげるべきだ」と強調した。
 

続く。
 
<出典>
「年金だけでは不足」84% / 2000万円問題、国民冷静
産経新聞(2019/06/18)
https://www.sankei.com/life/news/190617/lif1906170039-n1.html
 
2000万円、数字独り歩き / 同友会代表幹事「国民的議論を」
産経新聞(2019/06/19)
https://www.sankei.com/economy/news/190618/ecn1906180018-n1.html

2019年6月25日火曜日

(K0786)  認知症診断を早く受けることを勧める理由 <脳の無健康>

 
 「認知症だと診断を受けても、どうせ治らないので、診断を受けない」という人がいるようですが、とんでもない間違いです。


(1)  治る認知症もあります
(2)  MCIで発見できれば、認知症にならないですむ可能性があります
(3)  認知症になってからでは診断を受けるのが難しくなり、打てるはずの手を打てなくなります
 

【展開】

(1)  治る認知症もあります
 「認知症」とは病名ではなく、症状を説明する言葉です。「認知症」になる代表的な病気が「アルツハイマー型認知症」で、これは進行を遅らせることはできるが、治すことはできないと言われています。その一方、治る認知症もあります。
 
治るタイプの認知症
      正常圧水頭症(せいじょうあつすいとうしょう)
 脳脊髄液(のうせきずいえき)が脳室に過剰にたまり、脳を圧迫します。
      慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)
 頭をぶつけたりしたときに頭蓋骨と脳の間に血の固まりができ、それが脳を圧迫します。
      その他、脳腫瘍、甲状腺機能低下症、栄養障害、薬物やアルコールに関連するものなど

 
 認知症の疑いがあるとわかれば、精密検査をしてこれらの病気を発見し、治療し、治ることもあります。放置すると、認知症が悪化していきます。
 

(2)  MCI(軽度認知障害)で発見できれば、認知症にならないですむ可能性があります
 アルツハイマー病によるMCIはアルツハイマー型認知症と診断される前段階の状態です。  アルツハイマー病によるMCIを放置すると、数年後にはアルツハイマー型認知症を発症すると考えられています。  早い段階で発見し対策することで認知症の症状が最後まで出なくてすむケースもあります。
http://sodan.e-65.net/mci/04.html
 

 認知症の方に認知症検査を受けてもらうのは、本人がいやがって、とても難しいと言われています。あなたが認知症になった時には、家族があなたを病院に連れて行けないかもしれません。今なら、自分の判断・意思で認知症の検査を受けることができます。
 認知症が進行しそうな状況なら、認知症の進行を遅らせて認知症がひどくならないように食い止めたり、認知症になっても周りがあまり困らないように準備したり、また、自分も平穏に暮らせるよう準備したりしておくことも考えられます。
 認知症が進行中と分かったら終わりではありません。これから死ぬまでの時間をより豊かにしていく作業の始まりです。先手必勝。先手を取るためには、早期の認知症診断が必要です。

2019年6月24日月曜日

(K0785) 「老後に2000万円必要」問題(2) / 野党は何を言っているか <高齢期の家庭経済>

 
(K0783)からの続き。
 
 野党は何を言っているのか
 
1.   610日参院決算委員会

1.1.  立憲民主党 蓮舫副代表
 「国民は『100年安心』が嘘だったことに怒っている。『2千万円をためるとはどういうことだ』と憤っている」
 報告書の内容が平成16年の年金制度改革で政府・与党が年金制度改革を「100年安心」とアピールしたことに反すると強調した。
 
1.2.  共産党 小池書記長
 「『自己責任で貯金せよ』とは国家的詐欺に等しいやり方だ」と糾弾。記者会見では「年金問題は悪夢としてよみがえってくるのではないか」と述べた。
 
1.3.  国民民主党 大塚代表代行
 「(消費税と同様に年金に関する)問い合わせも無料にすべきではないか」と提案した。
 

2.   その他

2.1.  立憲民主党の辻本国対委員長は、麻生氏が報告書を受け取らない方針を示したことを「異常事態だ」と批判した

2.2.  立憲民主党会派の大串氏は「前代未聞の隠蔽工作だ」

2.3.  共産党の宮本氏は「選挙に不利かもしれないから『受け取らない』と言い始めたのではないか」

2.4.  立憲民主党の蓮舫副代表は「前代未聞だ。安倍政権のご都合主義はここまでなってしまったのかというのが、国民の多くが思っている正直な気持ちだと思う」
 

3.   619日の党首討論

 「党首討論の主な発言内容」を添付資料に示す。立憲民主党・枝野代表の「本質は、安心ばかり強調して実態に向き合わない姿勢にあるのではないか」という追求に対しては、安倍首相は、多様な年金生活者の実態に向き合って行ったのが平成16年度の改正だと述べ、これまでの取り組みとその成果を説明して終わっている。
 


続く。
 
<出典>
党首討論 / 首相 挑発にも淡々
産経新聞(2018/06/20)

2019年6月23日日曜日

(K0784)  存在感がなくなる(3) 別の選択肢。「高級老人ホーム」とは <見守り>


 (K0781)からの続き
 

 「A or B」ではなく、「A and/or B」と書いた。ここで、
A)   存在感をもってもらう
B)   存在感のないまま受け入れる
 
 この「A and/or B」の対立軸は、「neither A nor B」である。「AでもBでもない」
 


 明石の老人ホームでの孤独死に戻る。
 
 世間では、見守りに関心が向かっている。必要なことではあるが、本質ではない。本質は、「存在感」の無くなった老人に、最期まで尊厳をもって生きてもらうにはどうすればよいか、だと思う。
 
 ここで、見守りばかりを考えそれで良しとしたら、「AでもBでもない」に陥ってしまう。「存在感」のなくなった老人を放置してしまうことになる。
 
 
 スッキリした答えはない。でも、「A and/or B」で悩み、どうすればよいか試行錯誤で働きかける。そして、その間、孤独死しないように「見守る」。
 
 狭い意味で「見守る」は、一日一回様子を見るとか、センサーをとり着けたりするレベル。広い意味で「見守る」は、本人の「存在感」によりそいながら、異変があったら早急に発見し対処すること。
 
 狭い意味での「見守る」にとどまらず、広い意味での「見守る」まで踏み込めたら、その時こそ、パーノリ・イン明石が名実ともに「高級老人ホーム」と認められると私は思う。
 
 このシリーズ終わり
 
<関連>
(K0771) (K0773) (K0775) (k0777)
(K0779) (k0781)

イラストは、以下より転載
https://www.minnanokaigo.com/guide/cost/roujinhome/kaigotsuki/
 
 



2019年6月22日土曜日

(K0783) 「老後に2000万円必要」問題(1) / 「老後に2000万円必要」問題とは何か(1) <高齢期の家庭経済>

 
 「老後に2000万円必要」問題が取り上げられている。そもそも「老後に2000万円必要」問題とは何か


(1) 金融庁金融審議会の報告書

   金融庁は、金融資産の不足を生じさせないための提言を盛り込んだ報告書をとりまとめた
   今後30年の人生があるとすれば、単純計算で2千万円が必要と試算
   支出の再点検や資産運用などの取り組みが必要とした
   年金も退職金も今後減少傾向が続く可能性がある
 

(2) 報告書は実質的な撤回に追い込まれた

   麻太郎財務相兼金融担当相は、正式な報告書として受け取らない
   自民党も、金融庁に撤回を求めた
 


【展開】
 
(1) 金融庁金融審議会の報告書

   金融庁は、金融資産の不足を生じさせないための提言を盛り込んだ報告書をとりまとめた
 金融庁は63日、長寿化が進む人生100年時代において、金融資産の不足を生じさせないための提言を盛り込んだ報告書を取りまとめた。
 「これまでより長く生きる以上、多くのお金が必要となる」とし、生活水準を維持するには保有資産の運用など自助の取り組みが重要と指摘。
 
   今後30年の人生があるとすれば、単純計算で2千万円が必要と試算
 夫65歳以上、妻60歳以上の無職世帯の場合、公的年金を中心とする収入だけでは毎月5万円の赤字となるとし、今後30年の人生があるとすれば、単純計算で2千万円が必要と試算。
(注)毎月必要な家計は264,000円、年金で入るのが209,000円、差引55,000円の赤字
 
   支出の再点検や資産運用などの取り組みが必要とした
 公的年金が「老後の収入の柱であり続けることは間違いない」とした上で、支出の再点検や資産運用などの取り組みが必要とした。
 
   年金も退職金も今後減少傾向が続く可能性がある
 また、少子高齢化で年金の給付水準の調整が予想され、今後不足額はさらに拡大するとした。
 年金とともに老後の生活資金の柱だった退職金も、直近は大学卒で平均2千万円程度となっており、ピーク時から3~4割減っている。
 

(2) 報告書は実質的な撤回に追い込まれた

   麻太郎財務相兼金融担当相は、正式な報告書として受け取らない
 麻生太郎財務相兼金融担当相は611日の記者会見で、正式な報告書として受け取らないことを明らかにした。
 報告書は金融審の総会を経て麻生氏に手渡されることになっていたが、実質的に撤回に追い込まれたことで報告書の内容は政策に反映されなくなる。審議会の報告書が撤回されるのは異例。
 
   自民党も、金融庁に撤回を求めた
 二階俊博幹事長は記者団に「2千万円の話が独り歩きして国民に不安を招き、大変憂慮している」と述べた。
 岸田文雄長正会長は「報告書は極めてずさん」と批判する一方、「年金の持続可能性はしっかり確保されている」と強調した。
 

続く。
 
<出典>
老後資金3段階で運用提言
産経新聞(2019/06/04)
 
「老後に2000万円」撤回
産経新聞(2019/06/12)
 
写真は、以下より転載
https://www.sankei.com/column/news/190612/clm1906120002-n1.html


2019年6月21日金曜日

(K0782)  個人Blog 6月中旬リスト <サイト紹介>


● 個人Blog 6月中旬リスト
 

(1631)  悩みの種のランキングトップ10、自殺の動機
http://kagayaki56.blogspot.com/2019/06/1631-10.html


(1632)  女性活躍・ハラスメント規制法案(3) どう考えたらよいか
http://kagayaki56.blogspot.com/2019/06/1632-3.html


(1633) 「心豊かな悩み」  本能寺の変
http://kagayaki56.blogspot.com/2019/06/1633.html


(1634)  アウトプットとインプット
http://kagayaki56.blogspot.com/2019/06/1634.html


(1635)  シュピリ『アルプスの少女ハイジ』(3) / 100de名著
http://kagayaki56.blogspot.com/2019/06/1635-3100de.html


(1636)  立ち止まってしまった貴方に / 夢十則
http://kagayaki56.blogspot.com/2019/06/1636.html


(1637)  長時間の運転でも眠くならない方法
http://kagayaki56.blogspot.com/2019/06/1637.html


(1638)  勇気の系譜 第一部 使命(1) 李秀賢さん
http://kagayaki56.blogspot.com/2019/06/1638-1.html


(1639)  親族間殺人は、ほぼ半分
http://kagayaki56.blogspot.com/2019/06/1639.html


(1640)  就職氷河期と、ひきこもり・親族殺人
http://kagayaki56.blogspot.com/2019/06/1640.html


なお、前回の紹介は、

(K0772)  個人Blog 6月上旬リスト <サイト紹介>
http://kagayakiken.blogspot.com/2019/06/k0772-blog.html

2019年6月20日木曜日

(K0781)  存在感がなくなる(2) 二つの接し方 <見守り>

 
 (K0779)からの続き
 
 存在感がなくなった方にどう接すればよいか。
 

A)   存在感をもってもらう

 別の言葉で言うと、「存在感がある」「生き生きしている」「キラキラしている」「やる気がある」「お元気だ」「活発だ」「エネルギッシュ(エネルギーを感じる)」になってもらう。
 説得や、命令で改善できるものではない。あくまでも本人がどう生きようとしているかであり、他者が直接介入する余地はない。
 できるのは、本人に働きかけるのではなく、本人の環境に働きかけることだろう。どのような環境を作れば、本人が元気になってくれるだろうか。本人は、そのような支援を周囲から得て、自力で元気を回復していく。
 

B)   存在感のないまま受け入れる

 我々は普段気づかないが、存在感を維持するために、膨大なエネルギーが必要である。全体のエネルギーが減退している時、存在感のためのエネルギーを節約するのは、健全で賢明な反応だと思う。無理に存在感を持たそうとされると、本人は苦しくなる。
 

 好ましいのは、決めつけないことだと思う。本人は揺れ動く。「B) 存在感のないまま受け入れ」ながらも、どうしたら「A)存在感をもってもらえるだろうか」と工夫する。「A)存在感をもってもらえるだろうか」と工夫すしながらも、「B) 存在感のないまま受け入れ」ることを忘れない。
 
 「A or B」ではなく、「A and/or B」。
 
 
続く。

2019年6月19日水曜日

(K0780)  中高年女性に肥満リスク。照明つけたまま眠ると… <体の健康>

 
 照明やテレビをつけっぱなしにして眠るのは、中高年の女性にとって肥満のリスクを高めるとする研究結果を、米国立衛生研究所(NIH)のチームが10日、発表した。「真っ暗にして寝ることで、女性の肥満の恐れを減らせる可能性がある」としている。
 
 寝室のテレビや照明をつけたまま寝る女性は、調査期間内に体重が5キロ以上増加する確率が17%高かったことが、今回の主な研究結果の一つといえる。
 


 「論文の執筆者らは、結論として因果関係を導き出せたわけではないと注意を促しつつも、」と言っている。私(=藤波)は、この因果関係に疑問を抱いている。
 
 自論を述べる。
===
 神経質な人には、やせた人が多い。神経質な人は、照明をつけたまま眠れない。 この逆の現象が起こっている。 鷹揚な人には、太った人が多い。鷹揚な人は、照明をつけたまま眠れる。
 「照明つけたまま眠る」と「中高年女性に肥満リスク」との間に相関関係はあるが、直接的な因果関係はない。
===
 

 研究者は、因果関係について次のようにコメントしている

(1)  睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌が光によって抑えられた結果、概日リズム(体内時計)や食事パターンに混乱が生じた可能性がある

(2)  光が、食物摂取量の調節に関与するグルココルチコイドなどストレスホルモンの分泌を妨げる「慢性ストレス因子」として作用している可能性がある

(3)  代謝に直接影響を与える別のメカニズムが働いている可能性がある
 

 さらに、次のようにも言っている。

(1)  暗い部屋で睡眠を取ることを後押しする証拠が増えつつあり、今回の結果もその一つに加えることができる

(2)  肥満を減らすための公衆衛生戦略に、睡眠中のALANを低減するための介入を含めることも検討したら良いのではないか
 

 同時に、次のようにも言っている

(1)  調査データは自己申告によるものであり、光度も不明であることから、今回の研究結果にはいくつかの制約がある

(2)  人工光への暴露量が多いことは「社会経済的に不利なことや不健康な生活習慣があることなどさまざまな尺度も反映しており、これらすべてが体重増加や肥満の一因となり得る」
 

 因果関係はともかくとして、「部屋を暗くして寝る方が、熟睡できて健康に良い」は正しいと思う。ただ、こんなことは、こんなに凄く時間(5年間)と金をかけて調べなくても、生活の経験で簡単に分かる。
 


<出典>
中高年女性に肥満リスク。照明つけたまま眠ると…
産経新聞(2019/06/11)
 
照明やテレビをつけたまま寝る女性は太りやすい可能性 米研究
https://www.msn.com/ja-jp/news/world/%E7%85%A7%E6%98%8E%E3%82%84%E3%83%86%E3%83%AC%E3%83%93%E3%82%92%E3%81%A4%E3%81%91%E3%81%9F%E3%81%BE%E3%81%BE%E5%AF%9D%E3%82%8B%E5%A5%B3%E6%80%A7%E3%81%AF%E5%A4%AA%E3%82%8A%E3%82%84%E3%81%99%E3%81%84%E5%8F%AF%E8%83%BD%E6%80%A7-%E7%B1%B3%E7%A0%94%E7%A9%B6/ar-AACGM4Y