2017年6月4日日曜日

(K0036) 「絶望からの回帰」の後 / 新しい人生が始まった(10) <自立喪失からの脱却>


(K0031)では、絶望のどん底に落ちる過程を書いた。(K0032)では、絶望のどん底から這い上がる兆しについて書き(K0034)でそこで起こったことを整理し一般化した。まだ、絶望のどん底近くにいる。今回取り上げるのは、そこから徐々に這い上がり、地上に顔を出すまでの過程である。

 
(1)  私は、歩けなくなった自分に何ができるのかを考え始めました。絶望を取り払うには、失った存在意識をもう一度自分で取り戻さなければと思ったのです

(2)  退院したら何をしたいか、何を食べたいか、吉田さんは未来を想像できるようなことをいつも尋ねてくれました。「岸田さんはこれからよいことしかないから、心配しなくてもいいよ!」

(3)  人と話すことはベッドの上にいてもできることだと気づきました。大切な人の話に耳を傾けることで役に立ちたい。私は心理カウンセラーの勉強を始めました

(4)  人と向き合うというのは、自分と向き合うことでもあります。私は長い時間をかけて少しずつ、自分の挫折や障害に向き合い、受け入れ始めていました

(5)  自立生活を送るリハビリのため、リハビリテーションセンターに移りました。1年も経てばひと通り、車椅子での移動や、自力でベッドへの移乗ができるようになりました

(6)  私が次に挑戦したのは、車の運転です。両手だけで運転できる車があると教えてもらった。再び自分で車の運転ができるようになった時、一気に目の前の世界か明るく広がりました

(7)  私を支えてくれたのは、イヤホンから流れてくる大好きなアーティストの歌でした
    何度でも 何度でも 僕は生まれ変わっていける
    そうだ まだやりかけの未来がある( Mr.Children 『蘇生』)

(8)  少しずつリフォームを進めたので、一人で料理ができ、お風呂にも入ることができるようになった。「一人でできる」という小さな達成感の積み重ねは何よりも私を勇気づけました

(9)  退院から半年後、接骨院の仕事に復帰し、患者さんにセラピーもさせてもらえるようになった。傾聴は私の得意なことであり、車いすに乗っていてもできることであり、磨いた能力でもある

(10)不定愁訴の方が元気になり「ありがとうございます」という手紙をいただいた。とても懐かしい響きで、心の奥底で私がずっと探し求めていた言葉だった

 

 私は先に、「尊厳と自立度」というタイトルで整理した(K0030)。「失った存在意識をもう一度自分で取り戻」すというのは、絶望で切り裂かれた「尊厳」を取り戻す第一歩だろうだろう。「体の自立度」が著しく低下したが、「生活の自立度」を次々と向上させており、「尊厳」の高揚に寄与している。また、「心の自立度」(私は私らしくあり、私の事は私が適切に決める)を一貫して維持している。
 (K0030)で言及していなかった大切なキーワードの一つは、「誰かの役に立つ」だろう。これが「尊厳」に強く関わっているようだ。もう一つは「未来を想像」だと思った。

 

(前出)
引用:岸田ひろ実、「ママ、死にたいなら 死んでいいよ」~娘のひと言から私の新しい人生が始まった~、致知出版(2017)

案内:2017/6/8 <岸田ひろ実さんを囲む会>1900開演、隆祥館書店(大阪中央区)
http://atta2.weblogs.jp/ryushokan/2017/05/201768-%E5%B2%B8%E7%94%B0%E3%81%B2%E3%82%8D%E5%AE%9F%E3%81%95%E3%82%93%E3%82%92%E5%9B%B2%E3%82%80%E4%BC%9A-%E4%BC%81%E7%94%BB160.html

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