2017年6月17日土曜日

(K0049) 「死の不安」(2) / 高齢期の死生観(5) <臨死期>


「死の不安は、自殺を思いとどめる」という説がある。本当か?

間違いではないだろうが、逆の効果の方が大きいと思う。

 

「自殺する能力」というものがあって、「銃の取り扱いを知っている」もその一つで、「死の不安がない」もその一つらしい。すると、「死の不安がある」は、「自殺する能力」を弱めることになり、自殺しにくくなる。理屈ではそうなるが、実際は逆のほうが多いのではないか。
 

(1)  死が怖いのではなく、まさに死なんとするのが怖いのだ

 ずいぶん昔に読んだ、ロロ・メイの本に書いてあった。うる覚えだが、海難にあい独りぼっちでボートに乗って海原を漂っていると、このまま誰にも発見されずに死んでしまうのではないかと不安になる。死そのものというより、死んでしまいそうだという不安が怖い。だからボート上で死に絶えるより、自ら海に飛び込んで、つまり死ぬことにより不安から逃れようとすることが多いらしい。「死の不安」によって自殺することもある。
 

(2)  「死の不安」が減ると、「生の勇気」が高まる

 「死の不安」が減ると、「生の勇気」が高まる。「生の勇気」が高まると、「死の不安」が減る。悪循環から好循環に転じると、自殺に至らない
 

(3)  「死の不安」があるのは正常で、それ自体は悪いものではない

 適度な「死の不安」があるから、交通事故に気を付け、健康を管理しようとする。「死の不安」自体が悪いのではない。「死の不安」が御し難く大きくなった時、自殺に結びつく可能性がある。「死の不安」は勝手に出てくるものだから、いかんともしがたい。
 

(4)  なんとかなるのは、「死の不安」に耐える力

 「死の不安」を減らそうとすると、逆に「死の不安」は増大する。「死の不安」に耐える力は、「死の不安」を減らす。そもそも「不安がある」のではなく、「不安を作りだして」いる。周りを変えるのではなく、自分を変えることにより、不安は消滅に向かう。

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