私は養成講座を受けたのち、後見監督人としての神戸市成年後見支援センターの支援・指導を受けながら、お一人の成年後見人を受任して一年半弱の経験を持っている(継続中)。私の知識は、養成講座と(わずかな)実務体験を通じて得たものである。
ご参考:神戸市成年後見支援センターのパンフレット:
https://www.with-kobe.or.jp/wp-content/uploads/2017/01/pamphlet-1.pdf
一方、著者は、NPO法人の理事長として成年後見制度普及活動に携われ、多くの相談にのってきた豊富な経験があるようだ。
本を読み進めると、私にはしっくりこない。何故かと考えてみた。
著者は、多くの現実の困りごとの相談を受けてその解決に奔走されてきたが、その中には成年後見制度で解決可能なものと不可能なものが混在している。しかし、相談者にとっては、成年後見制度を適用しようがしまいが、ともかく解決しなければならない。筆者もその立場から成年後見制度を見ている。
私は成年後見人という立場にいるので、成年後見制度に含まれるものは誠実に履行しなければならず、他方、制度に含まれないものに手を出してはいけない。制度に不備があっても、それを批判するのに力を注ぐのではなく、それを認めたうえで被後見人の利益を最大限に追及する立場にいる。
一つ目に、立場の違いがありそうだ。
二つ目に、主対象の違いがありそうだ。
著者は、任意後見制度に深く関わってきた。法定後見制度にも関わっているがウエイトは低そうだ。一方、市民後見人は法定後見制度に関わるので、養成講座でも実務でも任意後見制度は眼中に入っていない。
さて、
【本の構成】 第3章 成年後見制度と相談
(1) 成年後見制度と介護予防
(2) 成年後見制度にまつわる決断の難しさ
(3) 成年後見制度と相談
(4) 後見と保証
(5) 成年後見制度における身上監護と財産管理
(6) 成年後見制度と医療問題
自分で納得していないものの解説は書けないし、書かない方がよいだろう。
書いてある項目を意識しつつ、私の考えを述べる
<私のメモ>
(1) 最初、成年後見にある「成年」に違和感があったが、未成年後見という言葉を知って納得した。成年後見での「成年」は「未成年でなく、かつ、判断能力が不十分な人」を指す。その後見をするのが「成年後見人」である
(2) 介護保険制度は、措置から契約に変わる抜本的な制度改正であり、契約できない人が取り残される。それを解決するのに成年後見制度が必要である
(3) 介護予防は介護状態にならないようにするためのものであり、成年後見人は介護状態になった人を対象にするので、直接は関係ない
(4) 神戸市民後見人は、一人だけを担当する。実際に担当してみて思うのは、実務をもちながら10人もの被後見人を抱える専門職後見人(司法書士や弁護士、社会福祉士等)が、(ちゃんとしている)市民後見人と同じことができるわけがない。ただ、市民後見人ではできないことを専門職後見人がしているので、両者とも必要である。
(5) 家族や友人が後見人になっても問題を起こさないようにすることは、相当難しいだろう
成年後見制度の問題点について鋭い指摘が多くみられるが、後見人制度の改革では解決できないものも多く含まれていると感じた。制度改革をする立場に私はいないので、ここでは取り上げない。
引用:
岡島貞雄・岡島みさ子、『老いには夢を ~安心して老いをむかえるために~』、神2016戸新聞総合出版センター(2016)
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