2018年1月29日月曜日

(K0273)  福祉と事業との両立 <インクルーシブな社会>


 前回、「就労継続支援A型事業所」について書いた。このブログは「少子高齢社会」に関するものであり、直接は関係ない。それでも、あえて取り上げたのは、「福祉」と「事業」との関係について考えたかったからである。少子高齢社会において、福祉と事業をどのように両立させられるかは、関心事である。


 私の考察結果としては、

(1) 福祉と事業が両立する素晴らしい事例は確かに存在するが、あくまで特殊例であり、ほとんどは両立に苦労していそうだ。つまり大多数の事業所に実現困難なことを要求しているのではないだろうか

(2) 福祉の意義を理解し、誠実に理想を実現しようとしている事業所がある一方、「障害者支援のスキルのない企業が国からの給付金目当てに参入、運営に行き詰まった結果、閉鎖に至る例が少なくないと見られる」(前回(1)参照)のが現実だろう

(3) 英語では、”The rotten apple injures its neighbor.”と言うらしい。和訳すると「腐ったリンゴは傍らのリンゴを腐らせる」。国はコストと時間をかけてでも、腐ったリンゴを取り除くべきだと思う

(4) 少しの理想的な事例があっても、それが一般に普及する見込みが少ないなら、そのような制度を設計すべきではない。普及見込の判断が甘かったのではないか
 

 「就労継続支援A型事業所」を対象としての考察だが、高齢者を対象とした福祉でも同じようなことが言えると思う。

 

 「就労継続支援A型事業所」の背景を先ず確認する。


 生涯者福祉制度においても、「措置制度」から大きく転換した。

===== 引用はじめ
 障害者福祉制度は、2003(平成15)年4月の「支援費制度」の導入により、従来の「措置制度」から大きく転換されました。措置制度では行政がサービスの利用先や内容などを決めていましたが、支援費制度では障害のある方の自己決定に基づきサービスの利用ができるようになりました。
===== 引用おわり
http://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/syogai/handbook/system/
 

 障害福祉として提供されるサービスの一つとして、就労継続支援A型(雇用型)がある。

===== 引用はじめ
「労働者」として働きながら、一般企業への就職をめざすためのサービス:
 企業等に就労することが困難な障害のある方に対して、雇用契約に基づく生産活動の機会の提供、知識および能力の向上のために必要な訓練などを行います。
 このサービスを通じて一般就労に必要な知識や能力が高まった方は、最終的には一般就労への移行をめざします。
===== 引用おわり
http://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/syogai/handbook/service/c078-p02-02-Shogai-21.html

 

 ところが、就労継続支援A型事業所で大量解雇が相次いでいる、というのが前回の(1)である。番組の解説によれば、そもそも二つの問題が起こっていた。

(1) 「労働者」として働いていたが、仕事をもらえないことが多かった
(2) 「一般就労に必要な知識や能力が高まるような」仕事ではなかった
そして、先に述べたように、
(3) 大量解雇が相次いでいる
 

 番組の解説によれば、賃金は本来、事業収益から支払われるべきなのだが、実際には雇用者一人当たりで支給される補助金から支払われることが多かった。そうなると、事業所としては、補助金と支払う賃金との差が利益になるのだから、できるだけ働かせない方が、利益が増える。また、補助金は、雇用者の数に比例するので、できるだけ多くの雇用者を確保しようとする。

 それは好ましくない状態なので、3年間の猶予をもって、厚生労働省は、補助金から賃金を支払うことを禁止することとした。しかし、そうなると収益事業としての「就労継続支援A型事業所」の経営の魅力がなくなる。だから、法が厳格に適用される前に、この事業から撤退しようとし、だから、大量解雇が発生する。
 

 番組では、クリーニング事業が紹介された。障がい者の特性(番組では「すぐ忘れてしまう」という特性)を考慮し、段ボール紙にすぐに書き込むことにより、仕事ができるようになった。その結果、一般のクリーニング店で採用されるようになった。また、前回(3)では、茸づくりでの成功事例が紹介されている。

 しかし、この二つは、稀有な特殊例だと思う。そのことを前回(2)のデータベースで検証する。

 現存する「就労継続支援A型事業所」での「仕事内容」をいくつか例示する。

  おしぼりの検品、加工、レンタルマット、おしぼりリース
  食肉の製造・販売
  食品(パン製造販売)、役務(清掃)、内職(竹炭)、店舗運営(「ふらわぁぽえむ」)
  雑貨(各種ノート類、メモパット類、レターセット類)、軽作業(タオル折り、箱折り、商品セット包装等)
  クリーニング(リネンサプライを中心に各種ウェア等)

 この仕事で、賃金を支払いながら「一般就労に必要な知識や能力が高める」ために、大変な苦労をされているのではないだろうか(現場を見ていないので、何とも言えないが)。
 

 どこまで信用できるかよくわからないが、次のサイトは、ある程度は、現状を示しているのではないだろうか。
https://www6.nhk.or.jp/heart-net/voice/bbs/messagelist.html/index.jsp?topic=2539

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