不動産の売買と認知症との関係について考察する。
(1) 認知症になってからの遺言
(2) 公正証書遺言
(3) 不動産の売買契約を締結した後に認知症になった場合
(4) 後見制度
(5) 委任
(6) 民事信託
【展開】
(1) 認知症になってからの遺言
認知症になってしまってからの遺言は、無効です。難しい言葉でいうと、事理弁識能力(意思能力)に欠けている状況での遺言は無効となります。
そこで、遺言を書いた時点で認知症だったかどうかが問題になります。
(2) 公正証書遺言
公正証書遺言の場合は、公証人(国家公務員であるが、実は自営業)の他にも2人の証人を要することから、意思能力を確認しているため、公正証書遺言においての、作成時の遺言者の事理弁識能力を争うケースが多くはありませんが、残念ながら、人間の行う事なので、多少の例外もあり、争うケースが無いわけではありません。
一方、自筆証書遺言では、作成した時点での遺言者の事理弁識能力を証明する人がいません。
(3) 不動産の売買契約を締結した後に認知症になった場合
いくら売主が、売買契約締結時に意思能力がはっきりとしていたとしても、決済時の司法書士による本人確認の時点で意思能力を欠いている場合、どんなに必要な書類が揃っていたり、推定相続人が売却しても問題ないという主張をしても、原則として相続が発生するまで、売却することができません。
(4) 後見制度
そもそも後見制度は、ご本人の財産の保全をすることが目的のため、財産が減少させることはできません。そのため、不動産を売却したり、節税対策をする等という事は、ご本人の財産を減らすことにつながる為、認められません。
逆にいえば、上記要因でなければ、後見制度を利用して不動産を売却することは非常に困難です。よく、「後見制度を利用すれば、認知症の方の不動産を売却できる」と主張される方がいらっしゃいますが、その認知の程度にもよりますが、上記の主旨からまず、困難です。
(5) 委任
委任の場合、ご本人に代わって売買契約の契約行為はできますが、万が一、決済時(前)に司法書士が、ご本人と面談し、意思能力に欠けると判断された場合、決済することができません。
(6) 民事信託
民事信託を利用することにより、信託契約によって、管理・処分権がBさん(受託者)に与えられていれば、例え、決済時等にAさん(委託者)に意思能力が欠いているとしても、民事信託の契約時にAさんに意思能力が有り、且つBさんの意思能力に問題なければ、決済をすることができます。
遺言も民事信託もそれぞれ、作成時、契約時に本人の意思能力がしっかりしていることは必須であり、可能であれば、作成時、契約時には、医師の診断書を取得する事。
注: 実際の問題に対処するときは、必ず専門家に相談してください。ここに書いていることによって損害を受けても、補償できません。
<出典>
”認知症対策”にも有効な相続対策 ~『民事信託』の活用~ by 佐藤 雄樹 2014/07/02https://manetatsu.com/2014/07/32780/
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