2018年5月20日日曜日

(K0384)  将来の認知症に備える(8)民事信託のデメリット <高齢期の家族経済>

 
 前回は民事信託のメリットを整理した。今回は民事信託のデメリットを整理する。民事信託のサイトを中心にしてメリットを整理するのは良いが、民事信託のサイトを中心にしてデメリットを整理するのは好ましくない。

 民事信託に関するサイトを立ち上げている会社や事務所のほとんどは、民事信託のお仕事を受注したい。なら、メリットは熱心に説明したいが、デメリットは書きたくない。書いてそれでお客さんが逃げてしまっては、わざわざお金をかけてホームページで説明する意味がない。だから、書くとしても、デメリットはやんわりと書く。致命的でないものを中心に出す。
 

 良心的な会社・事務所からお叱りを受けそうだが、実際に多くの場合、そういう傾向がありそうだ。あるサイトでは、民事信託のメリットは書いているが、デメリットは書いていない。ある事務所のサイトでは、「民事信託の仕組みを作ることによるデメリットはありません」とまで断言している。
 

 検索をすると興味深いことが起こった。「民事信託 and メリット」で検索した時と、「民事信託 and デメリット」で検索した時とでは、違ったサイトが上位に来る。単に「民事信託」で検索すると、「民事信託 and メリット」で検索した時と似ている。さらに、「民事信託 and デメリット」で検索したサイトでは、結構厳しくデメリットが書いてあるが、それらの多くは「民事信託 and メリット」で検索したサイトには書いていない。つまり、メジャーな「民事信託サイト」を読んでも、「民事信託のデメリット」をちゃんと認識できない。
 

 デメリットを知らずに、メリットだけを聞いて先に進むと、手痛い目にあいかねない。
 

 私の思う民事信託のデメリットを、以下に説明する。
 

【項目】

1.   契約書に書いてあっても、それが実現されないケースが多発すると思う

2.   契約の要になる受託者が期待通りの役割を果たしてくれるか、疑問である

3.   初期投資が、結構、高い

4.   後見人との比較が多くみられるが、誤解を招くものが多い。民事信託は、後見人制度に対して、メリットもあるが、デメリットもある

5.   デメリットをちゃんと説明しない専門家が少なくないが、専門家なしでは民事信託は組めない
 

【各論】

1.   契約書に書いてあっても、それが実現されないケースが多発すると思う

 説明を聞いていると、「契約書に書いてあるから大丈夫ですよ」ということになるが、委託者も受託者も受益者も一般の人が多いだろうから、「契約書を守る」という意識も能力も希薄なことが多いと思う。契約書に書いてあることと、実際に起こることとは必ずしも一致しないだろう。
 

2.   契約の要になる受託者が期待通りの役割を果たしてくれるか、疑問である

(1) 市民後見人との比較
 私は、神戸市民後見人である。三つの要素がある
  自発的に市民後見人になった
  一年以上の講習を受け、任命後も継続的に講習を受けている
  後見監督人である社会福祉協議会から指導を受けたり支援を受けたりしている
 専門家でない私が市民後見人を務められるのは、この三つの要素があるからだと思う。しかし、受託者はこの三つの要素のどれもない。民事信託の受託者の仕事は、後見人の仕事とは違うが、そう簡単なものではない。専門家ではないのに、契約をしっかり理解し、履行しなければならず、様々な手続きをし、さまざまな報告書を出さねばならない

(2) 利害関係
 被後見人と利害関係がある人が後見人にならないような方向である(家族後見人が減っている)。民事信託において、委託者も、受託者も、受益者も家族なら、濃厚な利害関係にある可能性が高い。特に、委託者が二次の受益者だと、一次の受益者と直接の利害関係にある(一次の受益者が使った金の分だけ、二次の受益者=委託者 の将来の取り分が減る)

(3) 受託者の権限
 受託者の権限が強く、受託者に信頼を裏切られたら、取り返しのつかない被害を受ける可能性がある。委託者が死んだ後も、受託者の権限が続いている(続いているから意味がある)
 

3.   初期投資が、結構、高い

 以下の数字を掲げるところが多い(添付表参照)。

信託財産の評価額 … 手数利用
===============
      … 30万円  最低料金
5,000万円 … 50万円  
2億円   …150万円  
4億円   …230万円  

 これ以外にも、様々な費用が加算される。
例えば、http://wakayama-minjishintaku.net/page-84

 「民事信託のお仕事」は、結構、美味しそうに見える。民事信託の効果を金額評価した時、これ以上の価値が無いと民事信託にする意味がない。
 

4.   後見人との比較が多くみられるが、誤解を招くものが多い。民事信託は、後見人制度に対して、メリットもあるが、デメリットもある

(1) 例えば「後見人は選べないが、受託者は選べる」との記述が多いが間違っている。正しくは、「法定後見人は選べないが、受託者は選べる」である。後見人としては、任意後見人と法定後見人がいて、任意後見人は選ぶことができる

(2) そもそも、民事信託と法定後見人とを比較しているサイトが多いが、あまり意味がない。認知症になる前だと任意後見人、認知症になった後だと法定後見人になる。一方、民事信託は、認知症になる前でないと契約できない。それなのに、民事信託と後見人(中身を見ると法定後見人)とを比較しているのはどうだろうか。選択するのは、民事信託か任意後見人か。

(3) 身上配慮義務とか取消権とかは民事信託にはない。家庭裁判所への報告は手間がかかるが、それだけ被後見人は守られているということである
 

5.   デメリットをちゃんと説明しない専門家が少なくないが、専門家なしでは民事信託は組めない

 メリットは説明するのに、デメリットをちゃんと説明していない専門家が多い。無知なのだろうか、嘘をついているのだろうか、フェアでないのだろうか、無頓着なのだろうか。任せてよいのだろうか。しかし、専門家の助けなしでは、民事信託は組めない。
 

 全ての専門家が怪しいといっているのではないが、中には怪しい専門家もいるだろう。われわれが、信頼できる専門家をちゃんと見極めなければならない。
 

<出典>

1)  角田・本多司法書士合同事務所「家族信託のメリット・デメリット(注意点)」
http://www.kakuta-honda.com/blog/2012/12/post-73-156969.html

2)  宮田総合法務事務所「家族信託のメリット・デメリットは何ですか?」
https://legalservice.jp/faq/16474.html#7

3)  東松山市 司法書士柴崎事務所「家族信託・民事信託のデメリットは?」
http://souzoku-shiba.com/sintaku/qa/20180109/

4)  みんなのお金ドットコム「民事信託とは。民事信託のメリット・デメリットまとめ」
https://minnkane.com/news/74#part-cec7a10cbfcf7e47

5)  司法書士 甲斐智也事務所「絶対に知っておくべき家族信託のデメリット(注意点)を徹底解説します」
https://kai-legal.com/kazokushintaku-demerit/


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