【 高齢期の家庭経済 ・老後二千円問題】総務省の 家計調査 から計算した「 老後問題 」は、17年度版で有ったが20年度版では無くなった。それでも 金融知識 は必要であり、日本人の 国民病 ともいえる 老後不安 に打ち勝つ一つの 処方箋だ 。
1.
「老後二千万円問題」とは何か
2.
二千万円は、どのように計算されたか
3.
消えた「二千万円問題」
4.
そもそも「二千万円問題」は「問題」ではない
5.
本当の「問題」は消えていない
6.
これから必要なのは、金融知識だ
【展開】
1.
「老後二千万円問題」とは何か
金融庁の審議会が報告書で「老後資金として2千万円が必要」と指摘し、野党やマスコミが政府に火の出るような批判を浴びせた。2年前の騒ぎのことだ。
この報告書が冒頭部分で示した「2千万円」が独り歩きした。老後には公的年金以外に2千万円が必要と受け止められ、「政府が公助の限界を認めた」などと飛躍した議論までまかり通り、日本人の老後不安に火を付けた格好となった。
2.
二千万円は、どのように計算されたか
報告書が指摘した数字は、総務省の家計調査から引用した平均的な統計データにすぎない。高齢者の2人世帯(無職)の場合、毎月の赤字額が約5万5千円になるため、1年で66万円、65歳から95歳までの30年の合計で1980万円=約2千万円になるとの計算だ。
3.
消えた「二千万円問題」
この報告書が引用した家計調査は2017年版だったが、20年版の家計調査をみると、同じ無職の高齢者2人世帯における毎月の収支は、1110円とわずかながら黒字に転換した。これだと年間で1万3千円あまり、30年の合計で約40万円の黒字を確保できることになる。
4.
そもそも「二千万円問題」は「問題」ではない
それでも統計データの平均値を使い、国民の老後資金を一律に論じるのは意味がない。
個人や世帯が老後にどんな生活を送るかによって、必要となる資金は大きく左右される。多額の老後資金を保有していても、浪費を続けていればその蓄えはいつか枯渇する。個人の暮らしぶりで決まる老後資金について、統計データで一喜一憂しても仕方がない。
5.
本当の「問題」は消えていない
昨年はコロナ禍の影響で消費支出が大きく減少した一方、特別定額給付金などの臨時収入もあり、これらの特殊要因によって家計収支の赤字が解消された形となった。
老後を支える公的年金の役割は大きいものの、老後資金の形成という自助努力も必要だ。そのために長期積み立て投資は効果的だが、老後不安を煽るセールストークに踊らされ、危うい投資に手を出すようでは本末転倒だ。その見極めのためにも金融知識は欠かせない。
6.
これから必要なのは、金融知識だ
日本でもようやく学校での金融教育が始まった。高校では来年度に入学する生徒から学校側の判断で、預貯金や投資信託などの金融商品や資産形成の重要性などを教えるという。
正しい知識で個人資産を形成することは、日本人の国民病ともいえる老後不安に打ち勝つ一つの処方箋だ。
<出典>
井伊重之(論説委員)、消えた「老後2千万円問題」
【日曜に書く】 産経新聞(2021/05/23)
https://www.sankei.com/article/20210523-FAFFCQLPTRPPBOEF3UGLWVOYME/
<添付図>
「老後資金2,000万円問題」の裏に隠された、本当に大切なこととは
http://www.am-one.co.jp/warashibe/article/fuyasu-20190626-1.html
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