2021年5月6日木曜日

(K1466) 「老人力がついてきた」 / 「老人力」(2) <仕上期>

 でも意味はわかっているので、話はつづけられる。つづくといっても名前は依然として出ない。

「ほら、あれが……」

「そうそう、あれ、あの中で一人だけ、あれが……」

「あれ誰だっけ」

「いや、おっしゃることはわかります」

 

 こういうのをぼくらでは「老入力がついてきた」という。

 ふつうは歳をとったとか、モーロクしたとか、あいつもだいぶボケたとかいうんだけど、そういう言葉の代りに、

「あいつもかなり老人力がついてきたな」

というふうにいうのである。そうすると何だか、歳をとることに積極性が出てきてなかいい。

 

 前回は、

(K1460)  老人力の発見 / 「老人力」(1) <仕上期>

http://kagayakiken.blogspot.com/2021/04/k1460-1.html

 

<出典>

赤瀬川原平、「老人力」、筑摩書房、P.9 P.10



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