でも意味はわかっているので、話はつづけられる。つづくといっても名前は依然として出ない。
「ほら、あれが……」
「そうそう、あれ、あの中で一人だけ、あれが……」
「あれ誰だっけ」
「いや、おっしゃることはわかります」
こういうのをぼくらでは「老入力がついてきた」という。
ふつうは歳をとったとか、モーロクしたとか、あいつもだいぶボケたとかいうんだけど、そういう言葉の代りに、
「あいつもかなり老人力がついてきたな」
というふうにいうのである。そうすると何だか、歳をとることに積極性が出てきてなかいい。
前回は、
(K1460) 老人力の発見 / 「老人力」(1) <仕上期>
http://kagayakiken.blogspot.com/2021/04/k1460-1.html
<出典>
赤瀬川原平、「老人力」、筑摩書房、P.9 ~ P.10
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