2018年6月26日火曜日

(K0421) 『礼記』(2) 八十の者 一子政に従わず <システムの構築>

 
前回からの続き。
 
 『礼記』には、現在に通じる知恵がある
 
(1) 「罪ありといえども、刑を加えず」
(2) 「子が養え」
(3) 「税に従わず」
 

【展開】
 
(1) 「罪ありといえども、刑を加えず」

 「耄」「悼」には、たとえ有罪でも刑罰を科してはならない、とある。「耄」は8090歳で「惛忘」(認知症)の状態になる。「悼」は、7歳未満で幼児にあたる。日本の最近の裁判の結果を予言しているかのようだ。
 
「耄」。JR東海認知症事故訴訟 最高裁判決

===== 引用はじめ
 責任能力がない認知症男性=当時(91)=が徘徊(はいかい)中に電車にはねられ死亡した事故で、家族が鉄道会社への賠償責任を負うかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(岡部喜代子裁判長)は1日、男性の妻に賠償を命じた2審名古屋高裁判決を破棄、JR東海側の逆転敗訴を言い渡した。判決が確定した。
===== 引用おわり
https://www.sankei.com/affairs/news/160301/afr1603010024-n1.html
 
 認知症で万引きした老人も、裁判沙汰になっている。『礼記』では、罪に問われない。
 
 
「悼」。今治。小学生が蹴ったボールで転倒し死亡――親の「賠償責任」 最高裁判決

===== 引用はじめ
 いまから11年前、学校の校庭でサッカーをしていた小学6年生の男児(当時11歳)が蹴ったボールが道路に飛び出し、それをよけようとした男性(80代)が転倒して、約1年半後に死亡した。その男性の遺族が少年の両親に対して損害賠償を求めた裁判で、最高裁第一小法廷(山浦善樹裁判長)は49日、監督義務違反があったとして両親に賠償を命じた2審の高裁判決を破棄し、遺族側の請求を棄却する判決を下した。
===== 引用おわり
https://www.bengo4.com/other/1146/1307/n_2936/
 

(2) 「子が養え」

 『礼記』では、100歳は子が養え、と言っている。

 一方、日本では、社会保障制度へ凭掛(ヨリカカリ)しようとする。

===== 引用はじめ
 社会保障費は、本来、自分たちが積み立ててきた蓄積金額の範囲内で配分すべきものなのである。しかし、そういう自律・自立・自己責任の個人主義精神は、家族主義で来た日本人に乏しい。
 金額が不足なら、御本家が、お上が補えばいいと思い、そう要求する、ぶら下がるので、今や社会保障費は厖大な赤字となってそれが蓄積され、絶望的となっている。
===== 引用おわり
 

(3) 「税に従わず」

 東北アジアの古代においては、家族主義(厳密には一族主義)であっったから、高齢になると、子が養ってきた。しかし、ただ単に家族が負担せよと言っていたのではない。『礼記』には知恵がある。

===== 引用はじめ
 曰く、八十の者[がいるとき]は、一子政(税)に従わず。九十の者は、その家[全員が]政に従わず。廃疾(*)[で一般]人[と同じ]にあらざる、養われざる者は、[家族の誰か]一人政に従わず。
===== 引用おわり
(*) 不治の病気。
 
 こうした免税をするので、家族主義の下、介護・養老等ができたのである。
 


<出典>

加地伸行、「八十の者 一子政に従わず」
【古典個展】産経新聞(2018/06/18)
 
写真は、
https://mainichi.jp/articles/20180419/k00/00m/040/155000c
より。


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