2018年11月8日木曜日

(K0555)  認知の予備力 <脳の健康>

 
 「認知の予備力(CR:cognitive reserve)」というのを学びました。


 加齢にともない、脳が破壊され、認知症の症状が出ます。しかし、同じように脳が破壊されても、認知症が早く現れる人と、遅く現れる人とがいます。個人差があります。
 この個人差を調べていくと、先ず、教育水準が関係していることがわかりました。また従事した職業も関係することがわかりました。人生経験(教育・職業)が関係します。


 個人差を脳のサイズや神経細胞の数で説明しようと先ず試みられました(受動モデル)。
 次に「認知の予備能力」で個人差を説明しようと試みられました(能動モデル)。知的な活動をしていると、脳の一部が損傷しても他の部分がカバーし、認知症症状の発生を抑制しているという考えです。
 認知予備能力の高い人は、脳の一部が破壊されても別の部分の脳を使って認知症と気づかれないように行動できるので、認知症症状の発生が遅くなります。ただし、その間でも脳の破壊は続いているので、認知症症状が現れると(その時には使える脳がすべて破壊されてしまっているので)急激に悪化するそうです。
 

 さらに次のようなことがわかったそうです。
  過去の知的活動よりも、現在の知的活動の方が、認知機能に影響を与えている
  負荷の高い知的活動に従事するより、多様な活動をしている方が、認知症発症や認知機能低下を防止する
 

 簡単にいってしまえば、色々なことに興味をもち、楽しみながら好きなことをたくさんする。特に、活動に参加し人と交わると効果が大きい。身体的活動、知的活動、豊かな対人関係が認知症発生を予防します。体も頭も心も、たくさん動かすのが良いようです。余暇活動が重要な役割を果たします。
 こう書くと、よく言われていることばかりです。
 


以下、御参考
 
===== 引用はじめ
 最近、「認知の予備力」という考え方が注目されています。
 加齢にともない、私たちの脳は少しずつ老化していきますが、「認知の予備力」を豊かにすることによって、脳の加齢にかかわらず、認知機能を維持し続けることができます。知的な刺激にあふれるライフスタイルには、「認知の予備力」をたくわえる効果があるのです。つまり「認知の予備力」を増やすには、休日や余暇の時間に趣味を楽しむことも有効であると考えられるのです。
===== 引用おわり
http://www.ncgg.go.jp/cgss/department/ep/topics/topics_edit16.html
 

===== 引用はじめ
認知予備力を高めるために
 
 一般的な高齢者における認知機能低下の様子をみると、機能低下が早くから始まる場合には、その低下速度は比較的ゆっくりであり、認知予備力が高い人ではある程度までは機能低下に抵抗してその機能低下を防御できることが考えられます。
 しかしながら高い認知予備力を有する人でも、いったん機能低下が始まると認知機能は急速に低下してしまいます。別の言葉で言うと、認知予備力とは、認知機能低下の始まりの時期を遅らすもとも言えます。
 そして、認知予備力を高めるためには、運動と社会活動が重要であることを指摘しておきたいと思います。
 
 高齢者となっても働き続けることは心身に良い影響を及ぼすと古くから考えられてきましたが、実際にフランス人についての研究では、60歳で退職すると65歳まで仕事を続ける場合と比較して認知症のリスクが15%高くなることが報告されています。
 仕事を続けることが認知機能と社会機能に良い影響を及ぼすことが示されており、仕事による社会活動と社会生産性が認知予備力を高めることに役立つことを示す報告と考えられます。


 ウェルビーイングと社会活動は認知予備力を高めることにより、高齢者の認知機能維持に役立っているものと考えられ、体調に問題がない限り70歳以降も働き続けて健康増進と長寿を目指すことが可能であることを報告されています。
 毎日の活動、脳への刺激、他人との交流は、認知予備力を高めるライフスタイルでしょう。
===== 引用おわり
https://www.kawasakigakuen.ac.jp/guide/feature/cognitivereserve_01.html
 


<出典>
岩原昭彦(京都女子大学)、「ライフスタイルと認知の予備力」、第60回臨床死生学・老年行動学研究会、大阪大学 中之島センター、2018/11/07
 
添付図の出典は、
https://www.rieti.go.jp/jp/events/bbl/16070701.pdf


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