【目次】
1.
かつて仕事をうまくできていた理由
2.
現代、職場でうまくやっていけない理由3. 職場でうまくやっていけず引きこもる中高年
4. 血縁がなくとも確かな協力関係が生まれる
5. 「疑似家族」のあり方へのヒントになりそうだ(藤波)
【展開】
1.
かつて仕事をうまくできていた理由
そもそも人間はつい最近まで、血縁のある者を核とした集団で仕事をしてきた。農業、漁業、家内制手工業、個人商店…。
そこでは成果をあげるための競争があまり激しくない。誰かが飛び切りの成果をあげたとしたら、それは血縁のある者のそれぞれにとっても利益となるからだ。
2.
現代、職場でうまくやっていけない理由
現代の社会では血縁のない者たちが集まって仕事をしている。自分自身が成果をあげなければならない。こういう成果が早急に求められる社会では、たとえば皆が目の前の成果にこだわり、長期的な展望にたって考えることがなかなかできなくなるという問題点もある。
実際、1990年代から2000年代にかけて多くの日本企業がこの成果主義を取り入れたが、ほとんどの場合、失敗に終わったという。
3.
職場でうまくやっていけず引きこもる中高年
引きこもりは男性が全体の4分の3を占め、中高年の引きこもりの場合、その発端となっているのは「退職」「人間関係」「病気」であるという。
「退職」が解雇によるのか、自主退職なのかわからないが、次の「人間関係」と合わせてみると、職場でうまくやっていけないことが最大の理由ではないだろうか。現在、中高年の引きこもりが多いのは一つにはこの成果主義のせいだろうか。
4.
血縁がなくとも確かな協力関係が生まれる
中南米の木の洞などにすんでいるチスイコウモリのメスは、母と子を除けば血縁関係にない。夜、牧場の家畜の血を吸いに出かけるのだが、意外と吸血に失敗し、もし二晩続けて失敗すると死に至ってしまう。しかしながら救済策もあり、吸血に失敗した個体に対しては、成功した個体が口移しで血を分け与えてやる。
与える側にとってもある程度死に近づくという危険な行為で、そんなことがなぜ血縁がなくてもできるのだろう。それは将来自分が吸血に失敗したとき、以前血を分け与えた個体が優先的に自分に分けてくれるからである。
5.
「疑似家族」のあり方へのヒントになりそうだ(藤波)
血縁のない者どうしが長くつきあうことになる人間の職場に、何か運命を共有するシステムを導入する。その時、軋轢(あつれき)を回避し、協力する関係が生まれるかもしれない。
<出典>
竹内久美子、中高年の引きこもりをなくすには【正論】 産経新聞(2019/07/02)
中高年の引きこもりなくすには 動物行動学研究家、エッセイスト・竹内久美子
https://special.sankei.com/f/seiron/article/20190702/0001.html
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