2020年6月1日月曜日

(K1129)  元気で長生き、は理想であって現実ではない / 自立期と仕上期との間にて(5) <自立期~仕上期>


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私たちには錯覚がある。元気で長生き、は理想であって現実ではない。マスコミは特別に元気なお年寄りをヒックアップして紹介する。その背後に、海の底のような深い世界が広がっていることを直視しようとはしない
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 「元気で長生き」したいという人は、多かろう。しかし、「元気で長生き、は理想であって現実ではない」は、本当だろう。何が、起こるか。
 今は、理想に燃えている。しかし、何年後かには、現実を突きつけられる。

 「元気で長生き」がないというなら、あるのは「元気でなく、長生きする」か、「元気で、長生きしない」かである。二つあるが、選択肢ではない。「元気で、長生きしない」を選択することはできない。元気ならば、死ぬ確率は低いからだ。ということは、「元気でなく、長生きする」ことを避けるのは、難しい。受け入れざるを得なくなる可能性が高い。

 できることは、大きく分けて三つある。

(1)  元気逓減傾きを小さくする
 年を取ると、体力も筋力も落ちていくのはやむを得ない。しかし、健康的な生活をすることにより落ちる速度を下げることはできる。元気度は下がっても、死ぬまでに元気限界を下回らなければ、元気で長生きすることになる。

(2)  元気でなくても、生活の質(QOI)を確保する
 例えば、寝たきりになっても楽しめる趣味がある

(3)  元気でない期間をいたずらに伸ばさない
 延命治療は、元気のない時間を殖やしてしまう


===== 引用はじめ
 現在、5万人をはるかにこえる百歳以上の長寿者の、八十パーセントが寝たきりで、要介護の状態にあるという。私たちには錯覚があるのだ。元気で長生き、は理想であって現実ではない。マスコミは特別に元気なお年寄りをヒックアップして紹介する。その背後に、海の底のような深い世界が広がっていることを直視しようとはしない。
===== 引用おわり
五木寛之、「新老人の思想」、P.144


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