【 読書 ・ 老人力 】老人力というのは大人物のような要素をぽ―んと与えてくれるのだ。感染してしまったコンピューター的なコセコセ力を、いつの間にかさあ―っと流してクリーニングしてくれるのが老人力なのだ。
そのうち鍵や手帖もぽ―んと忘れるようになるんじゃないか。上衣もぽ―んと忘れて、ズボンもぽ―んと忘れて、パンツもぽ―んと忘れて、それで電車に乗っていたら凄いと思う。大人物というより、もう人物を超えている。
別にそこまでなりたいわけじゃないが、老人力というのはそういう大人物のような要素をぽ―んと与えてくれるのだ。人間の、長い社会生活で培われてしまったコセコセ力を、少しずつ殺ぎ落してくれるような気がする。
最近のパソコンとかインターネットとか、ああいう社会的な道具は非常にコセコセしていますね。作業の順番ばかり気にして、間違いのないようにとか、そういう神経ばかり使っている。あれは社会の道具だから仕方ないけど、人間の方は、ああはなりたくないですね。でも道具というのは人間に伝染るんです。
そうやって感染してしまったコンピューター的なコセコセ力を、いつの間にかさあ―っと流してクリーニングしてくれるのが老人力なのだ。
前回は、
(K1508) ぼくはこの間財布を忘れた。お、来たな / 「 老人力 」(8)
http://kagayakiken.blogspot.com/2021/06/k1508-8.html
<出典>
赤瀬川原平、「老人力」、筑摩書房、P.48
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