【 読書 ・ 老人力 】青年が大志を抱かずに骨董を抱きはじめたのである。何とじじむさいことであろうか。といういい方は古い。何という老人力の横溢であろうか。というふうにいう。ただ、知識とネンキがないので、近過去の物を集める
前回は、老人の領域であった温泉に青年が入ってきたという話でしたが、今回は、老人の領域であった骨董にも青年が入ってきたという話です。これを著者は、若者に老人力が備わってきたのだと解釈します。
骨董には財力が必要だが、昔と違って金がある若者だからできる。だが、骨董に必要な知識とネンキはないので、近過去の物品をムリヤリ骨董にしはじめた。Gパン、スニーカー、テレホンカードなどです。
骨董品集めを楽しめるというのが老人力だとすれば、若者にも老人力がついてきたということになります。
===== 引用はじめ
骨董ブームもありますね。これは何年前からか。温泉よりはちょっと後だと思うが。青年が大志を抱かずに骨董を抱きはじめたのである。
何とじじむさいことであろうか。といういい方は古い。
何という老人力の横溢であろうか。というふうにいう。
骨董なんてそれこそ爺さんのものであったのが、まだ中年にも至らぬ、青年にも至らぬ少年法の中にヌクヌクといるようなものさえが、骨董骨董といいだした。
しかし骨董というのはどうしても、知識とネンキあってのもので、若年にはムリ。
ということで、若年としては近過去の物品をムリヤリ骨董にするという挙に出た。Gパン、スニーカー、テレホンカードといった、下手をすると現行品をまだ売っているような物品類に骨董を見立てて高額購入をはじめたのである。
高額になれば、近過去の物でもとりあえず骨董気分を味わえる。
金で買った老人力。
昔と違って金のある若者だからできることだが、苦しまぎれとはいえ、そこには老人力への暗黙の接近を見ることができる。
===== 引用おわり
前回は、
(K1544)
元気いっぱいの若者も温泉へ行く / 「
老人力 」(13)
http://kagayakiken.blogspot.com/2021/07/K1544.html
<出典>
赤瀬川原平、「老人力」、筑摩書房、P.96
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