2021年8月5日木曜日

(K1557) 老人力につき動かされ中古カメラ市へ / 「 老人力 」(15)

 【 読書 ・ 老人力 】いまは中古カメラ市にも若い女性。必ずしも男にくっついて来るのではなく、一人で自力で来て中古カメラに触ったりしている。みずからの体内に抱いている老入力につき動かされて、中古カメラ市まで来てしまっているのだ(?)


 「ぼく自身むかしは中古カメラなんてじじむさいと思って近づきもしなかったんだけど、忘れもしない1991年、春、ふとしたハズミで銀座松屋の中古カメラ市に足を踏み入れて、 一気に病気になった。」と著者。赤瀬川原平は1937年生まれなので、54歳の時だった。

 

 「そのころ中古カメラ市の会場は、黒山の人だかりの黒山が全員おじさんだった。 … 

世の中にこんな場所があったのだ。そのころ既にパチンコ屋にも若い女性が押し寄せ、競馬場にも若い女性が押し寄せ、うわァ世の中こうなるのかと思っていたから、黒山の全員がおじさんだけという場所を見つけて、そうか、ここまではさすがに女性はこないか。たしかに脳みその構造からして、女性と中古カメラは反りが合わない。」と確信した。ところが、

 

 「と考えてからウン年、いまは中古カメラ市にも若い女性がわんさといる。いや、わんさとまではいかず、いまだちらほらではあるけど、それが必ずしも男にくっついて来るのではなく、一人で自力で来て中古カメラに触ったりしている。みずからの体内に抱いている老入力につき動かされて、中古カメラ市まで来てしまっているのだ(?)。まだちらほら」

 

 相変わらず、何が老人力なのかは分かりにくいが、世相が変わってきているのは、よくわかる。垣根が取り除かれつつある。男性、女性、若者、老人の領域の境界線が薄れてきて、互いに侵入しつつあるようだ。若者に老人力がつき、老人に若者力がついてくる。男性に女性力がつき、女性に男性力がついてくる。結構なことではないか(ここは藤波の感想)。

 

 前回は、

(K1550) 大志 を抱かず 骨董 を抱く 青年 / 「 老人力 」(14)

http://kagayakiken.blogspot.com/2021/07/K1550.html

 

<出典>

赤瀬川原平、「老人力」、筑摩書房、P.97 P.99



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