子ども食堂の話題になると、いつも「子どもの7人に1人が貧困」というのが出てくるが、本当にそうなのだろうか? 実感からして、私は怪しいと思っていた。
世界銀行の調査が発表された。
===== 引用はじめ
子供の成育環境は日本3位、世銀が「人的資本指標」公表世界銀行は11日、子供の健康状態や教育環境などを国・地域別に評価した新たな指標「人的資本指標」を公表した。最も評価が高かったのはシンガポールで2位が韓国、3位が日本となった。
新指標は子供が18歳までにどの程度の労働生産性を得ることができるかを数値化して測ったもの。健康状態がよく、質の高い教育を受ける子供が多い国ほど評価値は高くなる。評価が高いほど子供が生涯に得られる潜在的な所得は大きくなるとしている。
===== 引用おわり
https://www.sankei.com/economy/news/181011/ecn1810110039-n1.html
「子どもの7人に1人が貧困」の国が、世界3位になるわけがないではないか !
からくりがある。添付図の右の吹きだしと内容を見比べてほしい。
===== 引用はじめ
7人に1人は貧困7人に1人は、平均的な収入の半分よりさらに収入が低い家庭で暮らしているって聞いて驚いたよ。
===== 引用おわり
「7人に1人は、『平均的な収入の半分よりさらに収入が低い』家庭で暮らしている」は正しい。『平均的な収入の半分よりさらに収入が低い』が貧困率を計算するときの定義であり、それに基づいて計算された結果が「7人に1人」だからだ。しかし、それを「7人に1人は貧困」と言うと、誤解を招く。
ここで言う貧困は、相対的な貧困率である。仮に日本全体で、各々の収入が10倍になっても、100倍になっても、やはり「7人に1人は貧困」のままである。おかしいとは思わないか。
また、日本全体で見ると、発展途上国に比べると、はるかに裕福である。その裕福な全体の中の下層部の何パーセントかを「貧困な人」と名づけるなら、そのうちある人たちが発展途上国に行くと、たちまち「裕福な人」になる。相対的な貧困率で考えると、おかしなことがいろいろ起こってくる。
問題にすべきは、相対的な貧困率ではなく、絶対的な貧困である。貧困で食べることのできない子が、日本に何人いるかだ。少なくとも、生活保護を受けている人は、他に贅沢をしなければ、おいしいグルメばかり食べようとしないなら、食べるに困ることはない。「その家庭に食べるお金がないから子ども食堂を運営する」ならば、少なくとも生活保護を受けている家族の子どもたちには、子ども食堂は必要ないはずである。
「子ども食堂が必要でない」と言っているのではない。子ども食堂が必要な子どもたちは存在する。私が思いつくのは、3つのケースである。
(1) 親が働いているなどの理由で、例えばお金をもらって一人でお弁当を買って食べている子(孤食の問題)
(2) 親が例えばパチンコでお金を使ってしまい、子どもに十分な食事を与えない場合。極端な場合、学校の給食だけで必要な栄養をとっている子(育児放棄~ネグレクトの問題)
(3) 例えば母子家庭で、生活保護を受けずにギリギリのところで頑張って生活をしている家族もあるだろう(貧困の問題)
「7人に1人は貧困」と言うと、それは実態とは異なるイメージを与えてしまう。
「7人に1人は貧困だから子ども食堂が必要だ」というのは、誤った認識だ。新聞記事の「子供の貧困解消が目的」は間違っている、と私は考えている。「子供の心の貧困解消が目的」ならOKだ。孤食の解消は、とても大切な課題だ。子どもだけではなく、高齢者にも必要だ。高齢者も受け入れている(子ども)食堂も多い。結構なことである。
<出典>
増える子ども食堂産経新聞(2018/10/14)
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