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「ご本人の想定外のことをしようとすると罵りの言葉を投げつけられるので、自分たちのケアの適否が明らかにわかり、訪問診療初心者であった私はこの方にかなり鍛えられました」。苦労したようで、無駄なものはない
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前回(K1069)からの続きです。
医療拒否の強い認知症患者の方に、具体的にどう接したか。
===== 引用はじめ(箇条書き形式に編集した)
(1) 訪問診療の時には看護師さんが無理やり腕を伸ばして血圧を測ろうとするのと、患者さんが強く抵抗するのとで同行の看護師さんが毎度苦労していました。
(ここまで前回書きました)
(2) でももし自分が、こんな風に無理やり腕を伸ばして血圧を測られたらどう思うかな?と考えると、看護師さんに血圧を無理に測るのはやめようと提案することになりました
(3) そして、もう言葉をほぼ無くしたこの患者さんにまずご挨拶をして、血圧を測りたいので腕を伸ばしてもいいかと尋ね、それでも抵抗は強く、叫ばれたり手に噛みついてこられたので、
(4) いったん血圧測定はやめました。声をかけながら胸を聴診し、「胸の音はいいですよ」と所見を伝え、調子はどうかと尋ねながら診察をしました。
(5) 今からしようとしていることを伝えながら診察し、この方が落ち着いたところでもう一度血圧を測らせてくださいとお願いし、
(6) 強く拘縮した腕を静かに伸ばしたり曲げたり、ストレッチしながら
(7) 血圧計を巻き付けて、「腕がきゅうっと締まりますが痛くないですよ」と言いながら測ると、今度は静かに測定させてもらえました
===== 引用おわり
私感想ですが、ポイントは7つ
①
これから起こることを言葉で伝えている
「腕を伸ばしてもいいか」(3)、「今からしようとしていることを伝えながら」(5)、「血圧を測らせてくださいとお願いし」(5)、「腕がきゅうっと締まりますが痛くないですよ」(7)
②
患者の状態にあわせて働きかけている
「もし自分が…どう思うかな?」、(2)「噛みついてこられたので」(3)、「落ち着いたところで」(5)
③
可能なことから始めてつながりを作っている
「声をかけながら胸を聴診し」(4)、「血圧計を巻き付けて」(7)
④
体に快いことをしている
「強く拘縮した腕を静かに伸ばしたり曲げたり、ストレッチしながら」(6)
⑤
「強く拘縮した腕」がキーワード
これが鍵ではないか。「強く委縮した腕」を無理やり伸ばそうとすると、痛くて抵抗するだろう
⑥
時間をかけて信頼関係を作っている
時間をかけて「こいつのことは嫌いじゃない」(前回出)にもっていった
⑦
「同行の看護師さん」には立場上できない
「同行の看護師さん」は立場上、時間をかけて医者を待たせることはできないだろう
<出典>
尾崎容子、認知症と介護・医療拒否【在宅善哉】 産経新聞(2020/04/04)
添付図は、下記より
https://www.kango-roo.com/ki/image_882/
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