2020年4月19日日曜日

(K1085)  実績のある、守りのデマンド交通 <高齢者の移動>

 
☆☆
人口減・利用者減で採算が悪化し、バスを減らしたり無くしたりしたいのだが、利用していた住民が困るので(苦情がでるので)「しかたなく」デマンド交通にする。発想を変えないと、攻めのデマンド交通は採用されない
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 前回、攻めのデマンド交通について述べた。今回は、守りのデマンド交通の状況を見る。
 
 
1.   交通手段の4段階
 
2.   世の中の動向
 
3.   デマンド交通の位置づけ
3.1.  交通の利便性で分類すると分かりやすくなる
3.2.  デマンド型交通とは
 
4.   事例
4.1.      大阪府高槻市
4.2.      大阪府寝屋川市
4.3.      大阪府四條畷市
 
5.   守りのデマンド交通の本質
5.1.  人口減・利用者減で、「しかたなく」デマンド交通にする
5.2.  もともと交通手段のないところに守りのデマンドを導入することは考えにくい
5.3.  発想を変えないと、攻めのデマンド交通は採用されない
 
【展開】


1.   交通手段の4段階
 都市の規模や立地によって住民の足を支える公共サービスのあり方は異なる。新井准教授(近畿大学准教授。交通経済学が専門)は「公共交通のあり方は現時点で大きく4つに分けることができる」と指摘する。
   大阪市などの大都市では、鉄道や地下鉄、路線バスなどが住民の足の中心。
   また、高槻市など都市部を囲むベッドタウン化した郊外では、路線バスが中心になる。
   中山間地になると限定された本数の乗り合いバスなど公共交通がぐっと少なくなり、
   さらに限界集落に近いような地域は公共交通機能がほとんどない空白地域が多い
(添付図参照)

(注)「中山間地域(ちゅうさんかんちいき)とは、日本における地域区分のひとつで、平野の外縁部から山間地にかけての地域を指す。日本の国土面積の約7割を占めている。」
Wikipedia『中山間地』
 上記③「中山間地」という言葉の使い方は、おかしいと思う。
 
2.   世の中の動向
 今はベッドタウンで路線バスなどが充実している地域でも、このまま少子高齢化が進み、利用者数が減ることになれば数十年後には公共の足の確保が困難になる可能性もある。
 
3.   デマンド交通の位置づけ

3.1.  交通の利便性で分類すると分かりやすくなる
   鉄道や地下鉄、路線バスなどが住民の足の中心
   路線バスが中心
   限定された本数の乗り合いバスなど公共交通がぐっと少ない
   公共交通機能がほとんどない
 人口が減り交通手段の利用者が減るに従い、
その地域に位置づけが変わる  ① → ② → ③
利用可能な交通手段が変わる  路線バス → コミュニティーバス → デマンド交通
 
3.2.  デマンド型交通とは
 高齢者の足として、近年注目されるのがデマンド型交通と呼ばれる、利用者の予約があれば希望の乗降場所まで迎えに行くシステムだ。新井圭太准教授は「必要に応じて運行するので、運営側はコストカットができる。バスの場合は利用者の運賃も抑えられる」とメリットを説明する。
 
4.   事例

4.1.      大阪府高槻市
 来年度から市営バスの高齢者無料乗車券(敬老パス)の対象年齢を引き上げることを決めた。
 市は「高齢化の進展が著しく、将来的に制度の維持が困難。苦渋の決断だった」と説明する。
 
4.2.      大阪府寝屋川市
 昨年12月から、デマンド型交通の一種である「乗り合いワゴン」の実証実験を行っている。
 市には民間に委託しているコミュニティーバスがあるが、急な坂や狭い道などバスの入りにくい場所があった。市のアンケートでは「自宅からバス停までが遠い」と答えた人は30・8%に上った。ワゴンはこういった既存の交通網から漏れた場所への運行を可能にする。
 
4.3.      大阪府四條畷市
 一部地域では今年4月、コミュニティーバスを4人乗りタクシー車両を活用したデマンド運行に変更した。
 導入前は36人乗りのバスが走っていたが、利用者の伸び悩みから1、2人しか乗っていないことも。住民からは「空気を運んでいる」と揶揄(やゆ)されることもあったというが、予約制に移行したことでコスト削減できるようになった。
 
5.   守りのデマンド交通の本質

5.1.  人口減・利用者減で、「しかたなく」デマンド交通にする
 人口減・利用者減で採算が悪化し、バスを減らしたり無くしたりしたいのだが、利用していた住民が困るので(苦情がでるので)「しかたなく」デマンド交通にする
 
5.2.  もともと交通手段のないところに守りのデマンドを導入することは考えにくい
 もともとバスがあったところを無くすときは引け目を感じるが、元々ないところに、新たにわざわざ資金を投入してまで、デマンド交通を導入する気が起こらない
 
5.3.  発想を変えないと、攻めのデマンド交通は採用されない
 攻めのデマンド交通は、守りのデマンド交通とは違う狙い(過疎化防止・地域の活性化)があることは、前回書いた。ここをしっかり説明し、納得してもらわないと、攻めのデマンドは導入されないと思う。
 
 このシリーズ、終わり
 
<出典>
ベッドタウンでも交通難民 / 住民の足確保へ「デマンド」活用
産経新聞(2020/04/11)
 
公共交通の未来は コミュニティバスやデマンドで
https://www.sankei.com/west/news/200410/wst2004100006-n1.html



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