2020年4月18日土曜日

(K1084)  先進的な、攻めのデマンド交通 <高齢者の移動>

 
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守りのデマンド交通は過疎化してしまった地域のため。攻めのデマンド交通は地域を過疎化させないためで、移動能力の落ちた高齢者に長く留まっていただくともに、子育て世代の転入促進も期待できる先進的な取り組み
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 急な坂道を休み休み登っているおばあさんに声をかけました。「大変ですね」。返ってきたのは、「しんどいね。私はここが好きなので、ずっとここに住みたいんだけれど、この坂を登れなくなったら、引越しするしかないわ。残念」という寂しげな声でした。
 
 これに応えよう取り組んでいるのが、攻めのデマンド交通(*)です。形は同じように見えますが、守りのデマンド交通とは、その働きが全く違います。守りのデマンド交通は、過疎化してしまった地域のためのものです。攻めのデマンド交通は、地域を過疎化させないためのものです。
 
(*) デマンド交通
 デマンドは「要求、要請」の意味。利用者が電話などで乗車を予約し、乗り場や行き先はエリア内なら希望できる。利用者がいなければ走る必要がなく、小型車で済むことから、経費削減やバスが走れない狭い道でも運行ができる。タクシーのような希望時間の乗車が必ずしも可能ではなく、乗り合いとなるため、すぐに目的地までいけないこともある。全国デマンド交通システム導入機関連絡協議会によると、導入した自治体は37(実証実験は除く)
(2011-02-18 朝日新聞 朝刊 ちば首都圏 1地方)
https://kotobank.jp/word/デマンド交通-891502
 
 ここでモデルとして取り上げるのは、公共バスの走る幹線道路が東西に走り、そこから北(山)の方に向かって、約400mの幅で宅地が広がっている地域です。そして、北に向かう道は急な坂道であり、さきほど登場したおばあさんが登っていた道です。坂を下って買物にでかけたのですが、重たい買物袋をぶらさげで、坂を登っていくところでした。
 
 この地域の高齢化率は1335%ですが(21の丁目ごとのデータ)、高齢化率が25%以下なのは、集合住宅比率(*)40%以上の地区です。逆に集合住宅比率が40%以下の地域での高齢化率は29%以上です。新しいマンションに若い世代が移り住んでいる地域の高齢化率は低く、マンションの少ない地域では29%を超えています。つまり、戸建のみをみると高齢化が進んでおり、このまま放置すると先のおばあさんのような人が、坂を登れなくなってどんどん転居し、残された家の一部は空き家と化します。つまり、過疎化が進んでいきます。
(*) 集合住宅比率=b/(a+b)a:一戸建て数、b:集合住宅数
 
 高齢化に伴い、住んでいる人の移動能力が落ちていきます。かつて平気で坂道を登っていた人が、だんだん登りにくくなります。登れなくなる前にデマンド交通を導入すると、買物・医療・娯楽などに関する生活の質が向上し、住み続けやすくなり、過疎化のスピードを落とせます。「登れなくなる前に」とは、「今」ということです。
 
 過疎化してしまってからデマンド交通を導入する(守りのデマンド交通)のではなく、過疎化が進行しつつある今、デマンド交通を導入し(攻めのデマンド交通)過疎化を抑制しましょう。
 
 さらに、この攻めのデマンド交通は、高齢者だけに限定する必要はありません。妊娠中・子供づれの若い世代も利用できます。高齢者に優しいまちづくりをすれば、自動的に、若い世代にも優しいまちになります。それでも転出する高齢者もいるでしょうが、その後に若い世代が移り住んでくれれば、まちは過疎化するどころか活性化していきます。
 
 守りのデマンド交通からの視点では、この攻めのデマンド交通の意義が見えません。この攻めのデマンド交通の導入は、永続的に住みやすいまちづくりを進めることにもつながっていきます。
 
 攻めのデマンド交通は、交通政策の一環であると同時に、過疎化防止政策にも重要な一翼を担います。過疎化が進んでしまいバスの運行に支障がでてから導入する守りのデマンド交通とは、違います。
 
()「デマンド」は「要求」,「オンデマンド」は「要求があればすぐに」という意味で,インターネットを通して受けた注文に応じたサービスを指すことが多い。「デマンド交通」「オンデマンド交通」「オンデマンドカー」などの言葉があるが、ここでは同じ意味で取ってる。
 
<出典>
「デマンド交通とは」
http://www.mlit.go.jp/common/000055842.pdf


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