【 読書 ・ 老人力 】使い古したものに、えもいわれぬ味わいが生れる。そうやって物体に味わいをもたらす佗び力、寂び力というのは、物体の老人力なのだった。とすると、老人力というのは日本文化だ。
===== 引用はじめ
お茶の世界などで、侘びとか寂びという言葉がある。作りたての新品ツルピカではなく、それが長年使われて、少し壊れたところが補修されたり、少し汚れがついたり、染みが広がったりして、えもいわれぬ味わいが生れる。
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そうやって物体に味わいをもたらす佗び力、寂び力というのは、物体の老人力なのだった。とすると、老人力というのは日本文化だ。
老人力のはじまりは七〇年代の温泉ブームあたりからか、と前に考察したが、とんでもない、じつは桃山時代までさかのぼるのだった。人間のボケ味ともいわれる老人力は、古来営々と日本文化の底流として流れつづけていたのである。
===== 引用おわり
老人力は、ついに物体にまで、拡大した。
ところで、それは、日本独特の文化なのだろうか。骨董品という言葉がある。
===== 引用はじめ
骨董品(こっとうひん)とは、希少価値のある古美術や古道具のことである。フランス語ではアンティーク (Antique) と呼ばれ、その語源はラテン語のアンティクウス(Antiquus、古い)である。 … 骨董品として重要なのはあくまで「古いこと」と「希少価値」であり、 …
===== 引用おわり
「骨董品」Wikipedia
骨董品は、西洋でもある。それと、どう違うのか。
おそらく、西洋の骨董品は、名品だろう。ここには、侘びとか寂びとかはないのではないか。「長年使われて、少し壊れたところが補修されたり、少し汚れがついたり、染みが広がったり」、つまり、使われて、名品とは言い難くなったものに美を感じる。物体そのものではなく「使った」という人間の営みに何かを感じているのではないだろうか。
前回は、
(K1684) 佗びとか寂びと呼ばれてきた感覚 / 「 老人力 」(31)
http://kagayakiken.blogspot.com/2022/01/K1684.html
<出典>
赤瀬川原平、「老人力」、筑摩書房、P.162
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