2019年9月27日金曜日

(K0879) 「認知症による物忘れ」(中核症状)と「老化による物忘れ」 <認知症>

 
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認知症による物忘れと老化による物忘れとを見分ける方法を、中核症状と関連付けながら説明する。エピソード記憶と認知症による物忘れとの関係も説明する。認知症発症以前のエピソード記憶を強化するのが回想法だ
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 「富士見市 認知症支援ガイドブック (認知症ケアパス)」で示された「認知症による物忘れと老化による物忘れ」と「認知症の症状 中核症状」とを関連付けてまとめた表を添付します。
 
 経験したことを丸ごと忘れる、というのが認知症による物忘れの大きな特徴です。『おもいでのアルバム』という歌の一番は「いつのことだか 思(おも)いだしてごらん あんなことこんなこと あったでしょう うれしかったこと おもしろかったこと いつになっても わすれない」。これを丸ごと忘れてしまいます。
https://www.youtube.com/watch?v=DP68_ZaB5BE
 
 「何を食べたか思い出せない」は、老化による物忘れです。認知症による物忘れは「食べたこと自体を忘れる」になります。一時間前に夕食を食べたのに、丸ごと忘れてしまうので、「まだ夕食をすませていない。早く食べさせてくれ」と言い張ります。
 
 「昨日の夕食で何を食べたか忘れた」でも、「あなたが好きな“う”のつく魚」とヒントを出してもらえれば「うなぎ」と答えられます。これは老化による物忘れです。認知症による物忘れは食べたこと全体を忘れているので、ヒントをもらっても答えられません。
 
 「昨日すれ違った有名な歌手の名前を思い出せず恥をかいた」というのは、認知症ではありません。認知症なら、そんなことがあったことをもう忘れています。認知症なら、顔の認識ができなくなるので、すれ違ったのが有名歌手なのが分かりません。会社から帰って来た息子に「どなたか知りませんが、よく来てくださいました」と歓迎するのは認知症です。
 

===== 引用はじめ
 エピソード記憶(エピソードきおく、episodic memory)とは、宣言的記憶の一部であり、イベント(事象)の記憶である。エピソード記憶には、時間や場所、そのときの感情が含まれる(感情は記憶の質に影響する)。自伝的記憶はエピソード記憶の一部である。エピソード記憶は意味記憶(事実と概念に関する記憶)と相互に関連している。エピソード記憶は物語にたとえることができる(Tulving, 1972)
===== 引用おわり
Wikipedia『エピソード記憶』
 
 認知症になると、このエピソード記憶を丸ごと忘れてしまいます。「エピソード記憶には、時間や場所、そのときの感情が含まれる」ので、「うれしかったこと おもしろかったこと」が思い出せません。認知症の方は、とても寂しいですね。
 
 ただ、思い出せないのは、認知症になってからのエピソード記憶で、認知症になる前のエピソード記憶は覚えています。回想法で認知症の方でも、子どもの頃の思い出を楽しそうに話すことができます。残念ながら、認知症が進むと、認知症発症以前のエピソードを記憶も失っていきます。
 

 最後に余談。認知症かどうか受診に来た人に対し、お医者さんは最初の質問だけで、だいたい見当がつくと言います。Q「今日は一人で来られましたか」。A1「一人で来ました」は認知症でない、A2「息子と来ました」は認知症だと言うのです。勿論これだけで決めつけてはいけませんが、かなりの確立で当たっているそうです。
 


<参照資料>
富士見市 認知症支援ガイドブック (認知症ケアパス)
https://www.city.fujimi.saitama.jp/kenko_fukushi_iryo/04koureisya/soudan/2015-0330-1724-38.files/SCN_0001.pdf

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