2019年11月5日火曜日

(K0919) 「16人に1人が体外受精児」という衝撃 <少子高齢化>

 
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「16人に1人が体外受精児」。何が起こっているのだろうか。「こどもが欲しい」という切なる願い。技術的な課題、経済的な課題、倫理的な課題、いずれも未決着のまま、体外受精はその動きを止めることがない
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 「16人に1人が体外受精児」というタイトルに驚きました。

===== 引用はじめ
 不妊治療の体外受精によって2017年に誕生した子どもの数は、56617人だったとの調査結果を日本産科婦人科学会が29日までにまとめた。この年に生まれた子どものおよそ16人に1人の割合。最多だった16年の54110人を2500人余り上回った。
 1983年に東北大で国内初の体外受精児が生まれてから合計で59万人を超えた。
 夫の精子を妻の卵子に注入する顕微授精などで作った受精卵を凍結しておき、着床しやすい時期に子宮に戻す方法が主流となっており、体外受精の出産の8割を占めた。
 成功しなかった分も含めた治療件数も448千件余りで最多となったが、16年から420件の増加にとどまった。
 調査した石原理埼玉医大教授は「治療を受ける年代の女性が減少している上に、16年から公費助成に42歳の年齢制限が導入されるなど条件が厳しくなったことが関係しているのではないか」と話している。
===== 引用おわり
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51520130Z21C19A0CR0000/
 

 本当かなと疑って調べました。「厚生労働省は22日、2017年の人口動態統計の年間推計を発表した。国内で生まれた日本人の赤ちゃんは941千人」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24959800S7A221C1000000/
941000 / 56617 = 16.6。日本産科婦人科学会も信用できそうなので、本当のようです。
 
 「16人に1人が体外受精児」をどうとらえるか。
 
 「色々な意見があると思うし、自然に妊娠して出産出来ることが一番だけど、様々な要因で不妊に悩む方が、このような医療の力を借りることで、元気な赤ちゃんが出産出来るようになるといいです。」(「2人目不妊治療を経て、8年ぶりにようやく妊娠出来ました」さん)
https://ameblo.jp/to3108116/entry-12540078899.html
が、一つの捉え方でしょう。人口減が心配されているなかで「どうしても子どもが欲しい」人が多いな、というのが私の感想です。希望を抱かせてくれる技術なのでしょう。
 

 少し調べてみました。
 
===== 引用はじめ
 生殖補助医療とは、不妊症のカップルに対して自然な性交によらず、精子と卵子を受精させて妊娠に導く医療技術のことを言います。一般に、取り出した精子と卵子を体外で受精させる「体外受精」と顕微鏡下で卵子に精子を注入する「顕微授精」とがあります。2010年の統計によれば、我が国で出生した児36人に1人は生殖補助医療で出生しているようです。
===== 引用おわり
http://www10.showa-u.ac.jp/~dohad/posts/paper29.html
 
  2010年:生殖補助医療:36人に1
  2017年:体外受精  :16人に1
 すさまじい増え方です。7年間で倍以上。「体外受精」は「生殖補助医療」より概念が広いので、実質は3倍近く(36/16*10/8=2.8)増えているのでしょう。


 「自然な性交によらず」というところが気になって、調べてみました。
 
  体外受精の着床前検査「異常が7割」という衝撃
===== 引用はじめ
 着床前検査について、日本産科婦人科学会はこれまで原則として、重篤な疾患の診断を行う検査のみ、審査のうえで一部だけ容認してきた。だから一般的な胚の検査は本来「禁断」だったわけだが、この検査の不妊・不育症への有用性を調べるとして、臨床試験を開始。


===== 引用おわり
続いて、
===== 引用はじめ
 臨床試験は、学会に認定された実績あるクリニック4カ所で得られた、見た目はよいと判断された胚が調べられたのだが、染色体本数が正常だった胚はたった3割ほどしかなかった。
 日本では今、胚を子宮に戻す「胚移植」が全国で年間25万回以上も行われているが、その多くが、実は、染色体異常胚を戻しているということになる。
===== 引用おわり
https://toyokeizai.net/articles/-/271405
 
  生殖補助医療で生まれた児の長期予後
===== 引用はじめ
 生殖補助医療の歴史はさほど長くなく、生殖医療で出生した児の長期予後については十分な検証ができていないのが現状です。

 最近の動物実験によれば、体外受精・胚移植で出生したマウスは、自然妊娠で出生したマウスと比較して、生後の成長パターンが異なるようです。そして興味深いことに、この成長パターンの違いには性別差があり、受精卵を培養するために使用する培養液の種類によってもそれは異なるということが示唆されています。
===== 引用おわり
http://www10.showa-u.ac.jp/~dohad/posts/paper29.html  (前出)
 


 短期的リスク、長期的リスクがまだ残っています。
 さらに、「体外受精は自費診療なので、同クリニックで胚移植を行うと1回戻すだけで20万円ほどかかる」「当院で公的助成金を受けた治療周期を調べたところ、3分の2は、妊娠していない周期に支払われていました。国や自治体も、限られた財源をもっと効率よく使わなければ」という、経済的な問題もあります。
 また、「着床前検査は、異常がある胚を戻さないのは命の選別であるという理由で厳しく規制されてきた」といった「命の選別」をめぐる倫理的な議論が繰り返される一方、「『命を選ぶな』というのは、簡単に妊娠できる人の意見だと思う」という声もあります。
 
 さまざまな課題をはらみながら、現実は「16人に1人が体外受精児」というところまで来ており、更に先に進んでいきそうです。
 


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