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延命治療には分水嶺がある。ある時点で延命から縮命に変わってしまう。しかし「やめるとき」が分からないので、最期まで延命治療を続けてしまう。医者が止めようとすると、「患者に死ねというのか!」と家族は怒る☆☆
1.
延命治療には分水嶺がある <ある時点で延命から縮命に変わってしまう>
1.1. [分水嶺前は延命]
ある病状までは、命を延ばし、QOL(生活の質)を改善するなど、いい面が多くあります。
1.2. [分水嶺後は縮命]<病気や老衰で終末期にさしかかると>
ある時点からは、延命治療は苦痛を増大させて、逆に命を縮める方向に変わります。
2.
抗がん剤治療にも分水嶺がある <ある時点で延命から縮命に変わってしまう>
抗がん剤はがん細胞を殺す強力な毒です。ほかの細胞にも悪影響を及ぼす副作用があります。
2.1. [分水嶺前は延命]
体力があるうちは抗がん剤の利益が上回るかもしれません。
2.2. [分水嶺後は縮命]
体力が低下した高齢者やがんの終末期になった人には不利益の方が大きくなります。抗がん剤の副作用でQOLが低下し、ますます体力が弱まって、命を縮めてしまいます。
3.
分水嶺は確かにあるが、どこにあるかが分からない。だから、延命治療を続ける
問題はその分水嶺が臨床現場で客観的にここだ! とはっきりとわからないことです。
3.1. 抗がん剤には「やめるとき」がある
医学の教科書にはちゃんと「全身状態が悪くなって、通院ができなくなったら、抗がん剤はやめましょう」と書いてあります。
3.2. 抗がん剤の「やめるとき」がわからないから、延命治療を死ぬまで続ける
多くの医療現場では最期まで延命治療をつづけています。終末期で在宅療養になっても、家族を車に乗せて抗がん剤を打ちに患者さんを病院につれていきます。
4.
家族と医者
4.1. 家族の勘違い
多くの家族は“抗がん剤”というのだから、それを飲んだり、打っておけば、治るか命が延びるだろうと大きな勘違いをしています。だから「治療をやめるなんてとんでもない」と怒ります。
4.2. 家族と医者
医者が「もう来なくていい」「緩和ケア一本に切り替えよう」と言うと、「患者を見捨てるのか」「患者に死ねというのか!」と家族は怒ります。
<出典>
長尾和宏、「平穏死 できる人、できない人」、PHP研究所(2014)、P.58-61
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