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坂本貴志研究員は「『国民の8割は65歳を超えても働きたいと考えている』というデータを前提に企業の再雇用などの法改正が進んでいるが、このデータには異なる読み解き方がありそうだ」と指摘する――
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===== 引用はじめ (抜粋・箇条書き形式にした)
(1) 政府は将来的に70歳までの雇用を企業に義務づけようとしている。これは火を見るより明らかである。
(2) しかし、ここに一つの大きな疑問が生まれてくる。すなわち、本当に70歳まで継続して会社で働くことが日本国民の望みなのか、という率直な疑問である。そもそも、8割の人が65歳を過ぎても働きたいという政府の認識は、明らかに人々の実感とずれてはいないだろうか。
(3) 内閣府「高齢者の日常生活に関する意識調査」では、その答えと思わしきものを提供してくれる。同調査では、60歳以上の働いている高齢者に対して何歳まで仕事をしたいかを尋ねているのである。その集計結果によると、42.0%の人が働けるうちはいつまでも働きたいと答えている。
===== 引用おわり
内閣府、平成26年度
高齢者の日常生活に関する意識調査
https://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/h26/sougou/zentai/index.html
で確認すると、「42.0%」という数字は間違っている(添付図)。「はたらけるうちはいつまでも」は、28.9%である。
https://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/h26/sougou/zentai/pdf/s2-1-1.pdf
「70歳まで働ける」と仮定して、A、Bを集計する
A=「70歳くらいまで(16.6%)」「75歳くらいまで(7.1%)」「80歳くらいまで(2.7%)」「はたらけるうちはいつまでも(28.9%)」 …合計 55.3%
B=「65歳くらいまで(16.6%)」「仕事をしたいと思わない(10.6%)」 …合計 27.2%
A+B=100%になるように再計算すると、A(67%)、B(33%)となる。
「8割の人が65歳を過ぎても働きたい」というのは、この統計で判断すると過剰であり、多く見積もっても2/3だろう。それにしても多い。
なお、添付図では、「42.0%の人が働けるうちはいつまでも働きたい」になっている。
https://president.jp/articles/-/42165?page=2
===== 引用はじめ (抜粋・箇条書き形式にした)
(4) この結果をもってして、内閣府「平成29年版高齢社会白書」では「70歳くらいまでもしくはそれ以上との回答と合計すれば、約8割が高齢期にも高い就業意欲を持っている様子がうかがえる」としている。これが、政府が依拠している「8割の人が65歳を超えても働きたいと願っている」という前提の背景にあるデータなのだ。
(5) 内閣府「老後の生活設計と公的年金に関する世論調査」でも類似した調査を行っている。同調査は15歳以上のすべての人を対象としている点で先の調査とは異なるが、やはり何歳まで仕事をしたいかを調べている。その年齢は、60歳以下が25.7%、61~65歳が30.7%、66~70歳が21.5%、71歳以上が16.1%となっている。その他を除くと、再雇用の期限までに引退したい人が6割、それ以上働きたい人が4割といったところである
===== 引用おわり
先の調査と比較すると、65歳を過ぎても働きたい人は、
「15歳以上」に聞くと、40%
「60歳以上」に聞くと、67%
すごく単純に推定すると、
「15~59歳」に聞くと、13% … 根拠は、(13%+67%)/2=40%
すなわち、多数派で言えば、若いうちは「再雇用の期限までに引退したい」と思っているが、60歳以上になると「65歳を超えても働きたい」に変わる。
続く
<出典>
<大元の出典>
統計で考える働き方の未来 ――高齢者が働き続ける国へ (ちくま新書) (日本語) 新書 –
2020/10/9 坂本 貴志 (著)
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