2021年4月17日土曜日

(K1446)  幼化現象 <仕上期>

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この石坂の考え、ちょっといいかもしれない。一生現役とか一生青春をめざす元気な老人もいるが、それはどこか無理があって痛々しい感じがする。数を塗りつぶして若さを誇ってもメッキみたいで哀れだ

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 「幼児退行」という言葉は、よい意味では使われないようだ。「その人の人格や知性が、普段の年齢相応の状態に比べて、幼い未発達状態に変わることで、主に精神疾患の症状としてのものが知られている」

https://dic.pixiv.net/a/%E5%B9%BC%E5%85%90%E9%80%80%E8%A1%8C

 主に子供を対象に使われることばだが、「退行」という言葉を外し、高齢者に対して使いたい。私は、人生を円環だと考えている。輪は、還暦を過ぎたところで、元(モト)来たところに還り始める。すなわち、子どもに戻り始める。認知症は、近い記憶から消えていき、その結果、子どものときの記憶が戻ってくる。元に戻ろうとしているのだから、良いじゃないか。

 『「老いた幼児」にならないように』というのがある。

http://www.kohokyo.or.jp/kohokyo-weblog/column/2018/05/post_168.html

 「幼」という言葉は、高齢者に使っても悪いイメージがあるようだが、それは元気な若い時代を基準としているからではないか。幼児が若者と違うように、高齢者も若者とは違うのだ。

 

 75歳の小説家、石坂洋次郎が書いた「老年万歳」というエッセーがある。

===== 引用はじめ

 朝食を食べた石坂は、「庭を眺めながら二つ三つ欠伸をしたあと、二階の書斎に引き上げる」。ズボンなどを脱いでベッドに入り、二時間ぐらいうつらうつらする。何一つまとまったことを考えるでもないこのうつらうつらを、石坂は幼化と呼んでいる。「私の心身が四歳、三歳、二歳、 一歳と幼化していって、人生の記憶というか知慧というか、それらがドンドンかき消されていくのだ。一歳からゼロに遡ると、いわゆる意識が消滅して、私は大気の中に還元してしまうのである。空しい感じはするが、そう恐ろしいとも思わない」

 この石坂の考え、ちょっといいかもしれない。一生現役とか一生青春をめざす元気な老人もいるが、それはどこか無理があって痛々しい感じがする。数を塗りつぶして若さを誇ってもメッキみたいで哀れだ。

===== 引用おわり

 

<出典>

坪内稔典、幼化現象

【モーロク満開】 産経新聞(2021/04/11)

 

添付イメージ写真(本文内容とは関係ありません)は、

https://mamagirl.jp/0000196254



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