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この石坂の考え、ちょっといいかもしれない。一生現役とか一生青春をめざす元気な老人もいるが、それはどこか無理があって痛々しい感じがする。数を塗りつぶして若さを誇ってもメッキみたいで哀れだ
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「幼児退行」という言葉は、よい意味では使われないようだ。「その人の人格や知性が、普段の年齢相応の状態に比べて、幼い未発達状態に変わることで、主に精神疾患の症状としてのものが知られている」
https://dic.pixiv.net/a/%E5%B9%BC%E5%85%90%E9%80%80%E8%A1%8C
主に子供を対象に使われることばだが、「退行」という言葉を外し、高齢者に対して使いたい。私は、人生を円環だと考えている。輪は、還暦を過ぎたところで、元(モト)来たところに還り始める。すなわち、子どもに戻り始める。認知症は、近い記憶から消えていき、その結果、子どものときの記憶が戻ってくる。元に戻ろうとしているのだから、良いじゃないか。
『「老いた幼児」にならないように』というのがある。
http://www.kohokyo.or.jp/kohokyo-weblog/column/2018/05/post_168.html
「幼」という言葉は、高齢者に使っても悪いイメージがあるようだが、それは元気な若い時代を基準としているからではないか。幼児が若者と違うように、高齢者も若者とは違うのだ。
75歳の小説家、石坂洋次郎が書いた「老年万歳」というエッセーがある。
===== 引用はじめ
朝食を食べた石坂は、「庭を眺めながら二つ三つ欠伸をしたあと、二階の書斎に引き上げる」。ズボンなどを脱いでベッドに入り、二時間ぐらいうつらうつらする。何一つまとまったことを考えるでもないこのうつらうつらを、石坂は幼化と呼んでいる。「私の心身が四歳、三歳、二歳、
一歳と幼化していって、人生の記憶というか知慧というか、それらがドンドンかき消されていくのだ。一歳からゼロに遡ると、いわゆる意識が消滅して、私は大気の中に還元してしまうのである。空しい感じはするが、そう恐ろしいとも思わない」
この石坂の考え、ちょっといいかもしれない。一生現役とか一生青春をめざす元気な老人もいるが、それはどこか無理があって痛々しい感じがする。数を塗りつぶして若さを誇ってもメッキみたいで哀れだ。
===== 引用おわり
<出典>
坪内稔典、幼化現象
【モーロク満開】 産経新聞(2021/04/11)
添付イメージ写真(本文内容とは関係ありません)は、
https://mamagirl.jp/0000196254
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