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検察官が息子らの意見陳述書の読み上げに入ると、男は車いすの肘掛けの上で腕をぷるぷると震わせ、怒りをあらわにした。長女は「2人きりの生活で、母は『死にたい』と思いこまされたのではないか」と推測する
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前回からの続き。
次の公判では様子が一変。検察官が息子らの意見陳述書の読み上げに入ると、男は車いすの肘掛けの上で腕をぷるぷると震わせ、怒りをあらわにした。
《被告(男)の言うことはほぼすべてが嘘。自分自身は自殺するつもりはなかった》
《母に自殺願望はなかったが、(被告に)「死ねといわれている」と話していた》
《モラハラのDV殺人だ》
息子らによると、男は日常的に妻を服従させており、「年寄りは早く死んだほうがいい」「自分の人生は自分でけりをつける」と公言してはばからなかった。
息子らは介護が必要な母を心配し、施設の利用や家族によるサポートを勧めたが、男はかたくなに拒絶した。長女は「2人きりの生活で、母は『死にたい』と思いこまされたのではないか」と推測する。
検察側は、「自殺の準備はすべて被告(男)が行った。被告(男)の関与がなければ妻は自殺しなかった可能性がある」と厳しく指摘。これに対し弁護側は、男が妻の介護を一手に引き受けた経緯を訴え、寛大な判決を求めた。
地裁は今年3月、「自殺の遂行を主導し果たした役割は大きい」としながらも、「介護に疲弊していたことは否定できない」として懲役2年、執行猶予4年(求刑懲役2年)の判決を言い渡した。
厚生労働省の調査によると、この夫婦のように介護する側とされる側がともに75歳以上となる「超老老介護」の割合は令和元年、家族間で介護する世帯の中では過去最高の33・1%を記録。介護をめぐる問題は、もはや人ごとではない時代になってきている。
このシリーズ、終わり
<出典>
超老老介護の末 自殺幇助
産経新聞(2021/04/26)
https://www.sankei.com/premium/news/210409/prm2104090001-n1.html
添付図は、厚生労働省 平成28年 国民生活基礎調査の概況より
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa16/dl/05.pdf
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